明治16年 (1883)、 日本で初めてのレンガ積みトンネルとして完成した 「明治の鐘ヶ坂トンネル」 の篠山市側で、 レンガが大きく崩落しているのがわかった。 故意によるものか、 自然に崩落したのかはっきりしないが、 地面に落ちているレンガ片が少ないことなどから、 同トンネルを管理している鐘ヶ坂公園運営委員会の飯谷幹夫会長は 「人為的に壊され、 持ち帰ったのではないか。 これ以上、 損傷がひどくならないよう対策を講じてもらいたい」 と話している。
同トンネルは現在、 篠山市側、 丹波市側ともに、 それぞれの坑口から20メートルほどの位置に柵を設置。 それ以上は奥に入れないようになっているが、 坑口から柵までは開放されている。 レンガの崩落が見られるのは、 篠山市の坑口側。
春と秋の年2回、 鐘ヶ坂公園で開かれる催しで、 同トンネルの 「通り抜け」 が行われ、 多くの人が普段入れないトンネル内部の見学を楽しんでいる。 飯谷さんによると、 昨年春の通り抜けでは崩落は見られず、 秋の通り抜けで気づいたという。
レンガが崩落している壁面は大きく4個所あり、 およそ幅3―5メートル、 高さ1・5―3メートル。 最大で深さ30センチほどくぼんでいる。
県柏原土木事務所によると、 「平成の鐘ヶ坂トンネル」 が2005年に開通した際、 明治のトンネルを調査。 レンガのはく落やはく離、 レンガの目地のすりへりなど、 老朽化の状況が見られたという。 ただ、 崩落に比べて地面に落ちているレンガ片が少ないのに加え、 ▽柵より奥は大きな損傷が見られず、 柵を境に損傷の程度がくっきりと異なる▽丹波市の坑口側では大きな損傷が見られない―ことから、 飯谷さんらは 「人為的な可能性が高い」 と推測している。
飯谷さんは 「旅行会社が、 明治のトンネルの見学をツアーに組み込んだり、 春と秋の通り抜けには阪神間などからも来られる。 史跡として、 観光資源としても価値が高い」 と言い、 「普段でも見学できるよう、 坑口付近を開放したのが、 あだになったのか」 と嘆いている。
同トンネルは国内では5番目に開通し、 レンガ積み工法では国内初。 約28万個のレンガが使われた。 土木学会から 「選奨土木遺産」 の認定を受けている。