至福の時間

2014.10.25
丹波春秋

 小学校卒業の学歴で、苦学して今の弘前大学の教授になった春日出身の国文学者、三浦圭三氏は深夜、書斎にこもったらしい。夕食がすむと寝床に入り、深夜2時に起きる。そして朝方まで学問にいそしんだそうだ。三浦氏の子女に以前聞いたところ、それは三浦氏にとって至福の時間だった。▼その時間、三浦氏は読書にふけりもしたろう。暗闇の底で、音も絶えた中での読書。本の言葉が胸にしみ込んだに違いない。読書は、沈黙の世界に身を置いてするもの。気軽な本ならいざ知らず、じっくり味わいたい本を読むならば、沈黙の中にあって本に向き合うのがいい。▼読書は、言葉と出会うことだが、思想家のマックス・ピカートが「沈黙なくして言葉は存在し得ない。もし言葉に沈黙の背景がなければ、言葉は深さを失ってしまう」と言ったように、言葉は沈黙を背景にしてこそ光彩を放つ。▼雑音が耳を騒がす環境下では、どんな名言にふれても、言葉の滋味をかみしめることはできない。沈黙の世界にひとりでいると、自分に向き合わざるを得ず、おのずと本の言葉が自分の内面へ滑り込みやすい。▼「いい言葉を沢山もつことは、銀行に沢山、預金するよりも豊かなことである」(寺山修司)。せいぜい至福の時間を持ち、いい言葉に出会いたい。あす27日から読書週間。(Y)

 

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