年の門出

2014.12.27
丹波春秋

 「地獄八景亡者戯(もうじゃのたわむれ)」という落語に、閻魔の庁にいる鬼と、噺家が登場する場面がある。これまで笑ったことがないという鬼だが、噺家が鬼の耳元で話しかけると、鬼は大笑いする。何がおかしいのかと聞く閻魔に、鬼は答える。「こいつ、来年のことばかり言いよりますねん」。▼「来年のことを言うと鬼が笑う」という。将来のことは前もって知ることができないから、こういう。今年1年を振り返っても、このことわざの通りだ。昨年の今の時点で、明くる年には丹波市で豪雨災害が起きるなどと、誰が予見したろうか。▼いつどこで、どんな難事が振りかかってくるかわからない。それが人の世。気をゆるめず、常に覚悟をしておかねばならない。だからこそ一休禅師は、正月で浮かれている庶民を戒めようと、元日に京都の家々を回り、「ご用心、ご用心」と触れ歩いた。▼年が明けると、まもなく「1・17」を迎える。来年は、阪神・淡路大震災からちょうど20年。震災で肉親を亡くした被災者が「いつ何が起きるか分からないことを、震災は教えてくれた」と話していた。続けて「だからこそ人との出会い、人との縁を大事にしたい」と。▼あと数日で正月を迎える。年の門出に気を引き締め、何を大事にして暮らすかを自分に問うてみるのもいい。(Y)

 

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