庶民の暮らし

2014.12.20
丹波春秋

 今年も押し迫ってきた。そこで、こんな小話―。暮れの大掃除がやっと終わり、「これで来年は良い年になる」と安堵していると、いつの間にか座敷の真ん中に無精ひげをはやした男がいた。それは貧乏神。あわてて貧乏神を追い出し、ほっとしたのも束の間、上の方から「そんなに押すな。また落ちる」という声が聞こえてきた。▼貧乏神がまとわりつき、どうにもこうにも貧しさから抜け出せない。苦しい暮らしが続く。なのに、貧しさや苦しさをネタにして笑い飛ばす。底抜けのたくましさと明るさ。それは楽天主義と言い換えられる。▼苦悩していない人と、苦悩を抱えている人。どちらが長生きできるかを調べたデータがある。言うまでもなく、長生きするのは苦悩していない人。▼家計の経済力や病気など、概して苦悩の種は誰も似たり寄ったりだ。要は、それにへこたれるか、そうでないか。対処によって、苦悩する人か苦悩しない人かに分かれる。その分岐点は楽天主義かどうかだろう。ならば楽天的に生きるに限る。▼麻生財務相が選挙運動の街頭演説で、「利益を出していない企業は運が悪いか、経営能力がないかだ」と述べた。中小零細企業の実態を理解しての発言とはとても思えない。庶民は楽天的に生きても、政治家は、庶民の暮らしに悲観的であるべきだ。(Y)

 

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