小倉百人一首競技かるたの日本一を決める 「第61期名人位決定戦」 (全日本かるた協会主催) が1月10日、 滋賀県大津市の近江神宮で開かれ、 兵庫県篠山市乾新町出身で、 篠山かるた協会所属の岸田諭名人 (27) =京都市=が、 挑戦者の東京大学かるた会所属の春野健太郎五段 (35) =愛知県=を退け、 昨年、 一昨年に続き、 名人戦3連覇、 2度目の防衛を果たした。 一時、 春野五段の猛攻に遭いながらも、 落ち着いた試合運びで勝利をものにした。
試合は5回戦まであり、 3戦先取したほうが勝利。
1、 2回戦は、 動きの硬い春野五段を圧倒。 読み札が読まれてからゼロコンマ秒の世界で、 聴く、 動く、 取る、 あるいは止めるの動作を披露し、 春野五段にまったくかるたを取らせず、 1回戦で13枚差、 2回戦で17枚差をつけて制した。
試合途中にはしきりに手で顔をあおいだり、 襟を治したりするなど、 極限の集中力で体温が上昇する様が見て取れるほどで、 応援者の誰もがストレート勝ちを期待した。
ところが、 3回戦になって、 春野五段が本領を発揮。 読み札が岸田名人陣内に集中し、 東大かるた会の流儀ともいえる 「攻めのかるた」 を展開し始め、 岸田名人はリードを許す展開になった。
岸田名人も自陣の札を取られることを防ぎ、 相手の攻撃をひたすらしのぎながら、 反撃の機会をうかがっていたものの、 終始、 調子の落ちない春野五段のペースに流されてか、 3枚差が付いてしまうお手つき 「準ダブル」 を出してしまうなどし、 6枚差で敗れた。 この試合が、 3度の名人戦で岸田名人が初めて落とした試合となった。
しかし、 4回戦では気持ちを切り替えて臨み、 1音目からの反応の鋭さとスローカメラでも動きが見えづらい速さ、 札を手で囲って相手に取らせないようにする見事な 「囲い手」 などで、 3回戦と打って変わって春野五段を圧倒。 さらに相手陣の札を取った際に、 自陣から相手陣に送る 「送り札」 でも、 春野五段の狙う札を送るなど、 戦術的な巧みさも組み込み、 名人の真骨頂を見せつけて9枚差で挑戦者を退け、 名人位を守った。
【競技かるた】
「五七五七七」 の和歌を 「五七五」 の 「上の句」 と、 「七七」 の 「下の句」 にわけ、 読手が詠む上の句から該当する札を判断し、 下の句だけが書かれた札をいかに早く取るかを競う。 競技には100首ある札のうち、 50枚だけを使用。 取り札を自陣、 敵陣に25枚ずつ並べる。 敵陣から札を取ると、 自陣の札を1枚相手に送る。 相手がお手つきをした場合も同様。 自陣の札が先になくなった方が勝利する。