そぎ落とす

2015.05.16
丹波春秋

 先ごろ丹波新聞社で1回かぎりの文章教室を開き、僭越ながら講師を務めた。そこで申し上げたことの一つは、「文章を削ることの大切さ」だった。文章を書くとき、ついつい力が入り、言葉を重ねてしまいがちだが、文章は書き足すものではなく、そぎ落とすことこそ肝心だと申し上げた。▼これはオリジナルの知見ではない。文豪が口をそろえて言っていることだ。たとえば、「文章読本」という文章道の手引書をものした谷崎潤一郎もそう。▼谷崎は、「小説の神様」と評された志賀直哉の文章を取り上げ、「叙述を出来るだけ引き締め、字数を出来るだけ減らし、普通の人が十行二十行を費やす内容を五行六行に圧縮」しているとした。余分な言葉を削ることで、一字一字に重みを加えるというわけだ。▼文章を書いていて、ここの言葉は切り捨てるべきか、残しておくべきか悩むことがある。そういう時は、「切り捨てなければいけない」とした太宰治は、「いわんや、その個所に何か書き加えるなど、もってのほか」と厳に戒めた。無駄な言葉は、文章にとっての贅肉。余分な形容詞や副詞、接続詞などは容赦なく削らなければならない。▼14日付の弊紙(丹波市版)で、肥満の人は睡眠の質が悪い傾向にあるとの調査結果が報じられていた。贅肉はやはり、そぎ落とすにかぎる。(Y)

 

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