父から小松菜の苗をもらい、プランターで栽培を始めて半月。ようやくそれっぽい形を成してきたのに、なかなかうまく育たない。それでも朝な夕な、青々とした葉を眺めるのが楽しく、毎日、「調子はどうや」と声をかけている。
父が育てる畑の苗と比べて、明らかに私のものは小さく、見るたびに敗北感を味わう。悩んだ末、畑仕事の師匠である母に教えを請うと、「間引かんと大きくならんで」。わかってはいても、小さな芽でこちらを見上げてくる若芽がいじらしくて、問答無用に引っこ抜くことができない。「最後は食べるくせに、あほか」と言われそうだけれど。
自分で取り組んでみて、農作物とは、植えたら勝手に育つものではないと改めて思う。店で売っているものも、農家の、まさに血と汗と涙が詰まっている。
シカを見ると、「山へ帰れ」と祈るようになった。よその畑や田を見て、どんな作物をどんな思いで作っておられるのか、と考えるようになった。
そんな意識は小さな小松菜が教えてくれたもの。無事に育てて、感謝して、存分に食したい。とにかく間引きと防虫対策をせねば。(森田靖久)