生の本能

2015.05.30
丹波春秋

 「人には元来、『生の本能』というものが備わっています。自らの崇高さ、気高さを自覚したい、という本能です。この本能が活発にうごめいている人にとっては、障害物は、避けるべき壁ではなく、身震いするほどに挑戦欲が湧いてくる壁です。障害物が困難であればあるほど、挑戦欲が高まります」。▼青垣で毎年、開催されている「ファインキッズトライアスロンin丹波大会」の大会長を仰せつかっている。役目の一つは、大会のあいさつ文を書くこと。冒頭の文は、以前に書いたあいさつ文の一部だ。▼トライアスロンは、スイム、バイク、ランを組み合わせた競技。スポーツに縁遠い身には、過酷に過ぎる。なのに、挑む人たちがいる。その理由の一つは、「生の本能」の発露ではないかと推察する。▼障害物に挑む手応えは、生きていることの手応えに他ならない。障害物を乗り越え、克服した際には、喜びが全身を貫く。それは自らの崇高さ、気高さを自覚したい、という生の本能が満たされた喜びであり、その喜びを求めて人はときに過酷とも思える難事に挑む。▼今年のトライアスロン大会では、目の不自由な女性が40歳代女性の部門で2位に入った。目が不自由なのも、レースに挑む上で立ちはだかる障害物であったろう。女性の生の本能のたくましさに敬意を表した。(Y)

 

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