「まつり」

2015.08.22
丹波春秋

 仕事上の所用もあり、毎年デカンショ祭に出かけている。今年は、日本遺産の効果もあってか例年以上の人出に思えた。2日目の16日、祭り会場の熱気にふれながら昨年のこの日を思わずにいられなかった。昨年の2日目は雨で祭りが中止。雨は市島町などで降り止むことなく、牙をむいた。▼人の歴史は、自然災害の歴史だという識者がいる。自然はときに、圧倒的な脅威として人にのしかかる。人は繰り返し災害にのみ込まれ、そのたびに苦しみをなめた。そんな災いから逃れることも願って、人は「まつり」を始めた。▼国語学者の大野晋氏は、まつりとは「神に物を差し上げて願いごとをすること」という。その願いごとには五穀豊穣もあれば、安全で平穏な日々への願いもある。23日、24日に行われる氷上町の愛宕祭の起源もそこにある。▼岡本丈夫氏の『たんば歴史の道』によると、元禄・宝永の頃、地元では飢饉が続き、大火災が起きるなど、村人たちは幾たびもの災難に打ちひしがれた。案じた村人は京都の愛宕神社に詣で、その分霊を勧請した。それが愛宕祭の起源になったという。▼平穏な暮らしを願い、自然災害をはじめとした災難が降りかからないよう祈った先人たち。その祈りが形になった「まつり」。祭りを楽しみながら改めて平穏を祈りたい。(Y)

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