60歳から

2015.09.05
丹波春秋

 篠山市の狂言師、山口耕道さんが12日午後6時から、たんば田園交響ホールで狂言会を開く。茂山忠三郎家の当主ら、狂言界の次代を担う中堅の演者らが出演する本格的な公演だ。▼山口さんは61歳。地元篠山で定期的な狂言会を開催したいという夢を長年持ち続け、還暦を迎えた昨年、「今やらないと、もうできない」と1回目の狂言会を催した。「70歳になるまで続けるつもり」という。プロデュースをし、出演もする山口さん。相当なエネルギーを要する事業に60歳を迎えてから挑んだ。▼勤め人にとって60歳と言えば、定年の節目。「新しい大きなことはもうできない」と尻込みする人に、脳科学者の茂木健一郎氏は「あなたは定年になったかもしれませんが、あなたの脳は定年になどなっていません」という(『感動する脳』)。▼茂木氏によると、人間の脳は、生きている限り自発的に活動し、百歳になっても成長し続けるという。肉体の衰えは仕方ないが、脳はずっと成長途上にあるのだから、人生は終着点のない旅だと言え、年をとっても新しいことに挑戦できる。▼能の大成者、世阿弥は「どんな名馬も老いれば衰えるのだから、50歳を過ぎれば、出演を控える方がいい」と書いた。もし世阿弥が今に生きていたなら、この“年齢限界説”は唱えないに違いない。(Y)

 

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