女性実業家、広岡浅子

2015.10.26
丹波春秋

 女性実業家、広岡浅子をモデルにしたNHK朝ドラ「あさが来た」を楽しみに見ている。奔放に生きる姿や、堂々とした押し出しが何とも痛快だ。ドラマではこれから浅子の人物像がみっちり描かれるのだろうが、浅子は生前、「私は、遺言はしない。平常言うことがみな遺言である」と語っていたという。▼同じ意味の言葉を残した人物がいる。明治維新の立役者、吉田松陰だ。いわく「平生の言行おのおの其の遺命なり」。日頃の言葉や行いがそれぞれの人の遺言だとした。浅子もそう考えていたのだろう。▼浅子は女子教育にも情熱を傾け、日本女子大学校の創設に力を尽くした。周囲が驚くような額の寄付金を創立準備費用として投じ、政財界の有力者の協力を求めて自ら奔走した。▼この献身的な姿からも松陰の有名な言葉を思い起こす。いわく「私を役して公にしたがう者を大人と為し、公を役して私にしたがう者を小人と為す」。私を使って公に従う人を立派な人といい、公を使って個人的なことに従事させる人をつまらない人という。そんな意味だ。▼「社会のために必要なことを使命として持とう」と言い、実践した浅子はまさに大人であった。浅子の教えを受けた春日出身の日本女子大学校長、井上秀も浅子に劣らぬ大人の気骨を持っていたに違いない。(Y)

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