短歌に支えられ100歳迎える 小林ふみ子さん(篠山市真南条上)

2015.10.04
たんばのひと

短歌とともに生き抜く

 今月13日に100歳の誕生日を迎える。夫の戦死、慣れない農業、一人での子育て。折れそうになる心を支えたのは、いつも「短歌」だった。

 ―花嫁の時の心で姑になってみたきと今は思えり

 18歳で嫁いだ後、生家へ送った手紙にしたためた初めての歌。初々しい気持ちを忘れずにいたいと決意を込めた。

 子どももでき、ようやく幸せな家庭を築き始めたころ、夫が戦地へ。武運を祈り、田を耕し、銃後の妻を務めながら、夫の帰りを待った。

 ―復員の記事読むごとに今宵こそ夫帰り来ぬかと化粧して待つ

 返信のないはがきを送り続けた。「夢ではよくお出会いいたしますけれど、実際にお出会いできる日はいつのことやら、心細い限りです」。夫が骨となっていたことを知ったのは、戦死から3年が過ぎていた。

 ―残る代を二人の子の為生くるべく誓いし心ゆるがんとす

 ひたすら農業に精を出した。娘たちも一生懸命助けてくれた。「なぜそんなに子どもを使うのか」と言われたこともあった。つらい時代を思い出すたび、涙が浮かぶ。

 35歳の時、本格的に短歌を学ぼうと短歌会に入会し、以来65年間、仲間や師にも恵まれ、歌を詠み続けてきた。

 「もう体にしみついてしまいましたね」。生活のふとした瞬間に言葉が浮かぶ。自然と短歌の形になっている。思いを歌に詠み、そして、その歌に助けられた。

 今では孫3人、ひ孫7人。誕生日の前にはお祝い会を開くと言ってくれる。「みんなが寄ってくれて、本当に幸せです」

 きっとまた新しい歌が生まれる。99歳。

 

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