小金ヶ嶽から

2016.02.10
未―コラム記者ノート

 多紀連山から雲海を撮影した写真集を出版した篠山市の小林典幸さん(1月31日号「人」)は言った。「てっぺんから見る景色は、そらもう、ものっすごい、きれいやで」。触発された。
 素人なので雲海はあきらめて昼間にし、多紀三峰の一つ、小金ヶ嶽(725)を目指す。誰もいない山。間伐で倒された木は鮮やかな緑の苔が覆い、ごぼうのささがきのようになった雪が積もる。
 なんて景色に見ほれている時間は少なく、息は絶え絶え、膝は痛い。鎖を頼りに進む個所がいくつもあり、何度もあきらめそうになりながら、やっとこさ頂上に着いた。
 その眺めは、「そらもう、ものっすごい、きれい」だった。幾重にも重なった稜線が延々と続き、まるで波のようだ。谷間に沿う集落。全天の青空。感動した。
 弁当を食べた。今、篠山の一番高い場所で昼食をしたのは私だ、と、独り悦に入る。
 井の中の蛙大海を知らず、と言われても仕方ないけれど、私の身の丈に合った感動だから許してください。これからちょくちょく登ろうと思う。(森田靖久)

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