G20と中国

2016.09.08
丹波春秋

 各国首脳が中国の杭州市に集まったG20の期間、同国政府は周辺300内の全工場を操業中止させ、市民になるべく市外に出かけるよう、割引券などで奨励したそうだ。お陰で西湖の景観がくっきりと映え、交通渋滞も起きなかったとか。

 排ガス規制の緩い車があふれ返って、青空の代名詞だった「北京秋天」が灰色にくすんだ「北京愁天」となっても、マスクをする人は意外に少なく、国民も政府もあまり気にしていないのかと思っていたが、工場を操業中止させてまで繕うとは、やはり恥ずかしいという気持ちはあるからなのだろう。それほどの強権を、排水・排ガスの基準強化や取り締まりにこそ効かせてほしい。

 G20を前に習近平主席は、2020年以降の温暖化対策「パリ協定」でオバマ米大統領と同時批准することで合意した。南シナ海の問題などで孤立しがちなため、ここはちょっと良い顔をしようという思惑が見え見えではあるが、京都議定書にそっぽを向いていた、あるいはCO2削減義務のなかった排出量最大の両国が動き出すなら、温暖化対策は少しは進むかもしれない。

 この夏の暑さや大型台風を思うにつけ、地球温暖化はもはや引き返せない「ノーリターン」点にさしかかったとの感もする。安倍政権もこの問題にもっと力を注ぐべきである。(E)

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