植物画家 小豆むつ子さん(篠山市宮ノ前)

2017.03.12
たんばのひと

生き抜く知恵に感動

 「ボタニカルアート」の分野で活躍する植物画家。ボタニカルアートは、植物のありのままの姿を、植物学的な見地から何の誇張も交えず、正確・細密に描き、鑑賞に堪えうる芸術性を併せ持った絵画のこと。自宅と明石市でボタニカルアート教室を主宰しながら、日々創作活動に励んでいる。これまでに植物画のハウツー本を数冊出版しているほか、大手菓子メーカーの商品パッケージへハーブ画を提供するなどしてきた。

 3年前に稲美町から移住。出身は鹿児島県で、霧島山のふもとで自然を遊び相手に育った。

 パートをしながら子育てと主婦業に奮闘していた40代、大動脈解離の大病に襲われた。一命はとりとめたものの、長い療養生活を余儀なくされた。

 回復後、「これから先、充実した日々を過ごしていくためにも、生きがいを見つけなくては」と絵画を始めた。そんなある日、図書館で植物画の本を見つけ、「こんな世界があるんだと驚き、本当に描きたかったもの、本当にやりたいと思えることに出会えた瞬間でした」。

 しばらくして「ボタニカルアートは植物学の知識がないと追求することができない」との考えから、人と自然の博物館で開かれているセミナー通いを始めた。そこで、アザミの受粉の仕組みに興味を持ち、数年間、研究と調査に没頭。その結果、国内ではこれまで標本でしか確認されていない雌株を高知県四万十市で発見するという成果を上げた。

 「植物の形には意味があり無駄はない。植物の生き抜く知恵と、それを観察し描きとることに楽しみと感動をおぼえる。絵画を通して、その思いを一人でも多くの人に届けることができたら」。67歳。(太治庄三)

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