妹の“贈り物”を実感
家族とともに障がいのある人の短期入所施設「おかえりみずほの家」(兵庫県篠山市北新町)や福祉タクシー事業を運営。「利用者のみんなの笑顔が見られることが楽しい。こちらが元気をもらっています」とほほ笑む。
大学卒業後、大手旅行代理店に就職。家業の旅行代理店を継ぐため篠山に戻った。
旅行業から障がい者福祉への転身には理由がある。重度の脳性麻痺を抱え、24歳の若さで亡くなった妹、瑞穂さんだ。短期入所施設は障がい者施設の中でも数が少なく、瑞穂さんと共に過ごした経験から、「障がい者も家族も息抜きできる場所を」と考えた。
自宅を改装した施設からは、施設と思えない会話が聞こえる。「ただいま」と「おかえり」。利用者が本当の自分の家のようにくつろぎ、受け入れる側も肩ひじを張らない。「妹と一緒にいたから、福祉業にすっと入れた。近所の人が応援してくださっているのも瑞穂がいたおかげだと思う」。最愛の妹が置いていってくれた“贈り物”の素晴らしさを実感する日々だ。
とはいえ、受け入れる利用者は、精神、知的、身体と多岐にわたる。気持ちは十分でも事業を始めたばかり。家族やスタッフとともに仕事に研修にと忙しい日々を送る。
障がい者への理解はまだまだ。「『ハンディキャップを持っているからかわいそう』という声もあるけれど、すごい才能のある人もいるし、暮らしにくいところもあるけれど、とても幸せそう。みんなが当たり前に暮らせて、元気と笑顔を振りまいてくれる場所をつくり、発信していきたい」
33歳。2人の子育てにも奮闘中。