兵庫県丹波市内の山を歩き、往時の社会インフラ「坂と峠」の研究を続けている小谷良道さん=三田市=が、青垣地域の36の坂の状況や歴史をまとめた「丹波の坂と峠第2集」(丹波新聞社印刷)を自費出版した。青垣の峠は、自著「丹波のおすぎ」(2014年刊)に一部掲載しており、13年から足掛け5年、36峠を網羅した記録をまとめた。
江戸中期の「丹波志」と明治の「旧版地形図」に基づき現地踏破。歩測で標高や道のりを測量し、図示した。道が分からず、場所によっては10回ほど足を運んだところもあるという。
神楽地区の稲土と小稗を結ぶ「センゾク坂」では、地図が途中で切れていてルートが分からず、地元の古老に話を聞き、道を探した。由良川水系と加古川水系の海運をつなぐ芦田地区の「塩久峠」は、「立派に練り上げられた道で、物流の要衝にと人と金を費やして整備されたことが感じられた」という。
春日の坂の記録をまとめた第1集は、11年発刊。「春日の山は栗柄峠のように、登った先に平地があるようなものがあったが、青垣は上りがあってしっかり下り、山が深かった」と感想。
「丹波市は、瀬戸内海から日本海へ日本の背骨を越すおもしろい地形で、日本横断型の峠がおそらく日本一多い」と言い、「500年、1000年前の人の気配が、尾根道には残っている」と話した。
今後、残る4町の坂も調査する。「終わるのがいつになるのか、気が遠くなる」とほほ笑んだ。
小谷さんは登山愛好家で、三田市に近い丹波地域の古道に関する資料が断片的にしかないことに気づき、10年ほど前から春から夏の終わりにかけて調査を続けている。
飛鳥書房春日店(春日町)、谷書店(柏原町)、足立仁さん(青垣町)で取り扱っている。1500円。小谷さん(TEL079・559・0309)。