兵庫県篠山市大山下の長澤松代さん(87)は、千代紙などを折ってこしらえる小さな傘作りを楽しんでいる。畑仕事の合間を見ながら1日に平均5つのペースで作るほどの熱中ぶり。丹精込めた傘182個を、このほど、同市北野にある菩提寺の念仏寺に寄贈した。長澤さんは、「数え年で米寿を迎えた。これまで大きな病気もせず、日々心優しい地域の皆さんに支えてもらっている私は幸せ者。これもご先祖様のおかげ」と、感謝の気持ちを表すため、菩提寺に傘を飾ることを思い立った。
傘は直径約15センチと、約7センチの2サイズ。色とりどり、さまざまな模様が描かれた21枚の千代紙を折って組み合わせ、骨組みにはつまようじを用いて仕上げている。傘の突端や骨の先には白や赤のビーズをあしらいアクセントとしている。
同寺の本堂奥にある位牌堂には、檀信徒をはじめ、戦没者や歴代住職らの位牌が整然とまつられている。当初、自分の先祖の位牌の前にだけ傘を飾ったが、「自分のところだけ華やかなのは申し訳ない」と、すべての位牌の前に傘を一つずつ飾りつけ、計182個となった。
傘作りを始めたのは昨年2月ごろ。集落の公民館で開かれている、デカボー体操の後のレクリエーションで、同じ集落の雪岡薫さんから傘の作り方を教わり、仕上がりの美しさに魅了された。
これまでに700個ほどを製作したが、手元にはわずかしか残っていない。「日ごろからお世話になっている人や、『きれいやなあ』『上手に作っとてや』と言ってくれた人にうれしくなってあげてしまうの」と笑う。