動物学者の河合雅雄(筆名草山万兎)氏が書いた「ドエクル探検隊」(福音館書店)は大傑作だ。1万1千年前に絶滅した体長4メートルの巨大なアルマジロの仲間「ドエディクルス」を、今も生き残っているという情報を手がかりにペルーまで探しに行く冒険物語。
動物達と話ができる「風おじさん」という博士が、昭和10年に「笹川町」の小学校を卒業したばかりの竜二とさゆりを率いて、他に色々な動物も同船させて南米ペルーに渡る。動物達はさゆりが妖女に誘拐されたのを助け出すなど様々な能力で活躍する。
作者は「ファンタジーとして自由に楽しんだ」と言うが、「動物記」全8巻の筆者でもある河合さんならではの造詣に裏打ちされており、またナスカの地上絵や、巨大動物の絶滅といった現実にある謎がベースになっているので、不思議なリアル感を持つ。
5頭のクジラに引かれて太平洋を渡る船、体長30㍍の大蛇に連れ去られるさゆり、森の奥深く、峻険な崖の向こうに残っていた桃源郷のナスカ帝国、老アルマジロが回想する大昔の気候変動期の飢餓地獄。
700ページ以上の大長編は場面が時間も空間も次々に変化し、動物たちの会話からにじみ出る人間観、戦争観に読者は考えさせられる。松本大洋氏の挿絵がアニメ化されれば、一層面白さを増すだろう。(E)