兵庫県丹波市氷上町の中辻郁美さん(35)は、「滝」の魅力にハマリ、全国各地の滝を巡っている。これまで訪れた滝は1500カ所。「たくさんの人に滝の魅力を伝えたい」と、“滝ガイド”になることをめざして行動し始めている。
「滝が大好き」と自覚したのは、21歳の時。山好きの父、弟と3人で同県養父市の天滝を訪れた時、「本当に天から滝が降ってきているようで、衝撃を受けた」と話す。
そこで「日本の滝100選」の存在を知り、すべて制覇することが目標になった。最初は1人で行っていたが、滝仲間ができ、行動範囲が一気に広がった。「感動を分かち合えるすばらしさも知った」
「滝は自然を五感全部で感じられる場所。風を感じ、飛沫を浴びると、“生きている”実感がわいてくる」と滝に惚れこんでいる。1人で滝を訪れ、時間がたっぷりある時は、「何もせずに滝の音を聞いてゆっくりするのが何より幸せ」とほほ笑む。
27歳の時には、思い切ってひとり、愛車で北海道と東北を回った。「一生に一度だけ滝のことだけを考えて過ごしたいという夢が叶った。最高の17日間だった」と笑う。
新婚旅行先も滝をメーンに選び、カナダのナイアガラの滝とタカカウ滝へ。2011年には最後に残っていた西表島の「マリュドゥの滝」へ行き、北海道から沖縄まで、100選巡りを達成した。
実家の近くに水がきれいな「日ヶ奥渓谷」(丹波市春日町)があり、子どものころからの遊び場だった。祖父母の家の近所には、丹波市観光100選にも選ばれている落差20メートル近い「独鈷の滝」へもよく遊びに行っていた。“滝マニア”になったのは偶然ではなく、素養があった。
今は、地元の人たちに滝や自然の魅力を伝えたいという思いが強まっており、「丹波滝部」というグループもつくり、「部長」として滝へ出かける企画も立てている。
また昨年、丹波の自然の中で朝ごはんを食べる「丹波バックパックモーニングクラブ(bpmc)」なるグループをつくり、月に1回、早朝4時集合で山などへ朝食作りに行き、朝日を見ながら食べる会を開いている。
子育て真っ最中で、活動には周りの理解も欠かせない。家族に感謝しつつ、「勝手な言い分かもしれないが、親が楽しんで生き生きしている姿を見て、子どもたちが“丹波っていい所なんだな”と思って育ってくれたらうれしい」と願っている。