産科休止の意向受け、市が検討会 医師体制「安全な分娩難しい」

2019.05.29
ニュース丹波篠山市産科問題

兵庫医科大学ささやま医療センター

兵庫県丹波篠山市の酒井隆明市長は20日、兵庫医科大学(同県西宮市)が、同大学ささやま医療センター(丹波篠山市黒岡)での分娩の休止を検討している意向であることを確認したと発表した。大学の意向を受け、市は、同センターの分娩機能を確保し、安心・安全に出産、子育てができる環境整備に向け、広く市民の意見を聞く「検討会」を6月にも立ち上げる方針。

酒井市長は、「市の中核病院として産科は不可欠だと訴えてきたし、大学にもできるだけの協力をしてきた」と、休止を容認する考えがないことを強調した。一方、同センターは丹波新聞社の取材に対し、「安全な分娩をいかに確保するかを考えた時に、分娩休止も選択肢の一つに入る可能性があるということ。これから市に対して正式に協議の申し入れをし、そこからの話だ」としている。

 酒井市長によると、5月10日に、県医務課を通じて市担当部に「医療センターが分娩休止を検討している」という旨の報告があったという。これを受け、17日に酒井市長が同大学を訪れ、太城力良理事長と面会したところ、「産科医2人では安全な出産ができない」と説明を受けたと言う。

 6月にも立ち上げる予定の検討会は、市医師会や自治会長会、民生委員・児童委員、学識経験者ら15人程度で構成する予定。講師や委員謝金、事務費など約78万円を補正する予算案を6月4日開会の議会に提案する。

酒井市長は、「現状と課題の分析をはじめ、他市の事例などの情報も集め、産婦人科を守るためにどんな対策ができるかを話し合っていきたい」としている。来年3月までの10回程度の会議を予定しているが、「早くまとまるのか、予定より長引くのかは未定。まとめたものは、医大との話し合いの中に生かしていく」と話した。

 同センターの産婦人科は、前身の国立病院時代の1995年から勤務し、医師不足のため、一時期は1人で分娩を担っていたこともある池田義和医師が今年3月末で退官したが、退官前と同様の2人体制は維持している。同センターは、「これまでも課題だったが、今の体制では安全な分娩は難しい。市との協議が必要」と話している。

 昨年6月に市と同大学が締結した「ささやま医療センターの運営等に関する基本協定書」では、同大学は、センターにおける婦人科や小児科などの「存続と充実に努める」とし、医療従事者の不足や経営状況などでやむを得ない事情となっても「当該診療科の存続、再開について可能な限り努力する」としている。

2018年度の同市の出生数は269人。このうち、分娩数は同センターが89人、タマル産婦人科(同市東吹)が81人で、2院で全体の約3割ずつを担っており、残りの4割は隣接市にある県立柏原、三田市民など市外の病院。市は同センターに対し運営補助金として年1億2600万円を交付している。

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