置き土産

2019.10.20
丹波春秋未―コラム

 前号の丹波篠山版で「源昌基金」を伝えた。生涯、陸上競技に親しまれた源昌氏が生前、丹波篠山市陸上競技協会に寄付されたお金を基に設けられた基金で、昨年から基金を原資にした「激励賞」が、陸上競技で活躍している市内の児童生徒に贈られている。

 源氏は今年3月、自分史を上梓された。生い立ちから始まり、学校教諭時代の思い出、定年退職後の活動など、90年の生涯をつまびらかにされた。自分史ができてからわずか40日余りのちに急逝された。

 瀬戸内寂聴氏の言葉を思う。寂聴氏は、ささやかでもいいから自分のあとに生きる人のためになるものを残しましょうといい、「私は書くことと祈りをこの世への置き土産にします。愛しい若い人々のために。子供たちのために」と書いた。

 人は必ずこの世から立ち去る。そのとき、次代の人のために何を置き土産にして残すか。陸上競技に打ち込む郷土の子どもたちのための基金、自分の生きた足跡を我が子孫に伝える自分史。今に思えば、これらは源氏の置き土産でなかったか。

 源氏は5月2日午前零時41分、心不全で亡くなられた。数時間前まで普段通りで、突然の死だった。5月1日の日記に「令和元年を迎える。家族の健康と幸せを祈る」とあった。この祈りの言葉も、愛する家族への置き土産となった。(Y)

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