林住期

2019.10.06
丹波春秋未―コラム

 高齢になっても働く女性たちや男性と親しく話す機会があった。女性たちはいずれも80歳代の4人。もっとも年長の88歳女性が営む縫製所で共に働く仲間たち。出退勤自由で「気楽な職場」という縫製所で、80歳を超えても働けることに張り合いを感じておられた。

 男性は70歳代半ば。スーパーで商品陳列などのバイトをし、自分の小遣いを稼いでいるという。「おかげで毎日、好きなお酒を飲んでいます」と朗らかに笑われた。

 人生のステージについての古代インドの教えがある。第一ステージは、学びの期間である「学生(がくしょう)期」。次は、結婚をし子どもをもうけ、生計を立てるために働く「家住(かじゅう)期」。その次が「林住(りんじゅう)期」。家族を養うなどの、しがらみから解放されたステージをいう。

 自分のやりたいことをやり、自分らしく生きることのできるステージでもある。先の女性たちや男性は、家住期のように生計を立てるために働いているのではない。働きたいから働き、潤いのある日々を得られていた。林住期を満喫されていた。

 しかし、現実はこうした人たちばかりではなく、働かざるを得ないから働く高齢者もおられるだろう。老後2000万円問題が言われ、年金の今後が危ぶまれる今だ。そんな現代社会での林住期は、「淋しい」の「淋住期」かもしれない。(Y)

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