「支援のカレー」にふしぎな縁 兵庫・熊本・バングラつなぐ 学校建設費用に販売 災害支援機にレトルト化

2019.12.09
ニュース丹波篠山市地域地域

深いコクが特長の「学校つくっちゃお! 本場バングラデシュカレー」

兵庫県丹波篠山市京町にあり、バングラデシュへの教育支援活動を行っているNPO法人「バングラデシュの村を良くする会(P・U・S)」。その拠点施設「だいじょうぶ屋」(同市二階町)では、週末になると、本場仕込みの「バングラカレー」がスパイシーな香りを漂わせる。最近、このカレーがレトルトになった。経緯を尋ねると、2016年に発生した熊本地震の際、同法人の代表、岩下八司さん(70)が熊本県へ復興支援活動に出向いたことがきっかけという。一杯のカレーが兵庫と熊本、そしてバングラを結ぶ。

岩下さんと妻の啓子さん(70)は、アジア最貧国とも言われるバングラデシュで暮らす子どもたちの支援にと、30年以上にわたって自費や、個人、企業の寄付を募って学校を建て続けてきた。

その数なんと21校。卒業した子どもたちは5000人以上に上る。支援を続ける理由を2人は、「子どもたちの笑顔が見たいから」と笑う。

費用を自分たちで工面するために売り出しているのが、岩下さんがバングラデシュの家庭で学んだ特製のバングラカレー。たっぷりのミンチ、ショウガやニンニク、そして、バングラデシュで仕入れてきたチリコリアンダーやターメリック、カルダモンなどのスパイスを加える。水は入れず、玉ねぎから出る水分のみというこだわりようで、深いコクと辛さが特長だ。

イベントや拠点施設などで販売しており、このカレーを食べるために遠方から訪れる人もいる。

熊本とのつながりで誕生したレトルトのバン
グラカレーを手にする岩下さん(左)と妻の啓
子さん=兵庫県丹波篠山市二階町で

熊本地震の支援がきっかけに

災害支援活動にも熱心に取り組んでおり、11年には東日本大震災で被災した宮城県に赴き、長期間活動した。

そして、16年、熊本地震が発生するとすぐに現地へ。がれきの撤去作業や支援物資の運搬、破損した建物の補修などに取り組み、震度7を観測し、甚大な被害を受けた同県西原村に入った。そこで活動したのが、障がい者福祉施設を運営するNPO法人「にしはらたんぽぽハウス」だった。

同法人が避難所への炊き出しを行っていることを知り、得意の料理の腕を振るって活動に協力。スタッフとともに調理などを行い、避難所にいる約250人に温かい食事を届け続けた。

同法人にはたくさんの人が駆け付け、ボランティアの活動拠点に。そこで、汗を流す人々にふるまったのがバングラカレーだった。

ともにカレーで支援活動

同施設での活動は継続的なものになり、互いに訪問し合うなどスタッフとも懇意になった。同施設は、炊き出しを自費で行っていたため、「少しでも何か手助けを」と考えた。そこで同施設が地震前から作っていた馬肉入りのレトルトカレー「阿蘇俵山カレー」を兵庫に持ち帰って販売するようになった。

ともに売り上げを支援活動に充てるカレー。このふしぎな縁がある日、実を結ぶ。

「バングラカレーもレトルトにしませんか」―。法人スタッフからの提案だった。「冗談かと思った」(岩下さん)ら、本気だった。

6000個で学校1校

試行錯誤を重ねて誕生した商品の名前は、「学校つくっちゃお! 本場バングラデシュカレー」(1000円)。名の通り、売り上げの一部をバングラでの学校建設費用に充てるもので、パッケージ裏面には、「本品6000個の売り上げで小学校が1校建ちます」とつづり、「ご一緒に学校を建ててみませんか?」と呼びかけている。

「とても良いつながりから商品ができて、うれしいもんですわ」と話す岩下さん。「カレーを味わってもらって、熊本にもバングラにも関心を持ってもらえたら」と目を細める。

「何か起きたら、すぐに動く」がモットーの夫妻。思わぬ商品の誕生も、そんな生き方へのご褒美かもしれない。

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