情報拡散は「保証人と同じ」 キャスター下村さんが講演 踊らされないために「4つの自問自答」を

2019.12.31
ニュース丹波市地域地域

情報に踊らされないための思考方法の具体例を挙げ説明する下村健一さん=2019年12月23日午前11時28分、兵庫県丹波市青垣町佐治で

情報モラルについて学びを深めようと、兵庫県丹波市の青垣中学校と氷上西高校の全校生がこのほど、白鴎大学特任教授の下村健一さんから、不用意な発信で人を傷つけないための思考方法を聴いた。「情報に踊らされないための四つの疑問と自答」の演題で、発信する前に「私は何を伝えたいか(明確さ)、決めつけていないか(正確さ)、傷つけていないか(優しさ)、これで伝わるか(易しさ)」の4つの自問自答をすることを、具体例を挙げながら解説した。

下村さんは、TBSの報道アナウンサーを経てフリーキャスターに。小学校の教科書の執筆など幅広い子どもたちのメディア、情報教育に携わっている。以下、講演の要旨をまとめた。

SNSでセンセーショナルな話題に触れた時は即座に拡散せず、「まだ分からないよね」と考えることで、デマを広げることを止められる。

本当かどうか確認ができないけれど、どうしても人に知らせたい時は、「本当かな?」を添える。何も考えずに拡散すると、その情報の保証人になるのと同じ。インターネットは思い込みを固める道具でなく、思い込みを壊す道具。手元に情報源が一つしかない時は、立場や視野などを変えて考える。同じ情報が全く違って見える。

「報告か意見・印象か」を区別し、情報をうのみにしない。例えば「疑惑のAは、こわばった表情で、記者を避けるように家からこそこそと出ていった」という記事を見た時、このまま受け取ると、記者の持っている印象にのってしまう。

記者の意見・印象をふき取ると、「Aは家から出ていった」のみになる。これでもAを怪しいと感じるか。意見・印象をふき取ると9割、情報に踊らされなくなる。

立場の数だけ物の見方は変わる。昔話「桃太郎」も、退治された鬼の立場で考えると、桃太郎が悪役になる。

情報は「スポットライト」。周囲に必ず「暗がり」がある。隠れている物はないかな、という見方をすることも必要。暗がりの例として、2015年に韓国で流行ったMERS(中東呼吸器症候群)のテレビ報道がある。

何か映像を撮らなければいけないのでマスクをした人を撮る。その映像を見た視聴者は、みんながMERS患者のように思うが、マスクをしている人がみんなMERSという訳ではない。マスクをしていない人は暗がりにいて、映像には映らない。

SNSでは自分の考えと違う人とわざとつながるべき。似たような意見ばかり見ていると、世の中の人は自分と同じ意見だと思ってしまう。違う意見の人と出会うと『非常識』と思ってしまい、君たちの世界を狭め、好みをタコ壺に追い込んでいく。

自分と違った意見が自動的に流れ込むようにしておくことで、不愉快だと思っても、こんな考えがあるんだと知ることが大事。人生が変わる。

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