市民話し合いの場つくる 龍谷大生が地域で実践研究 「見ない顔」に来てもらう

2023.06.11
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「人とまちが育つ『話し合い』創造プロジェクト」を指導している只友景士・龍谷大教授

兵庫県丹波市春日町黒井地区自治協議会が、まちづくりに生かすとともに、学生教育に役立ててもらおうと、龍谷大学校友会丹篠支部の仲介で、同大政策学部の学生を受け入れている。「政策実践・探究演習」の「人とまちが育つ『話し合い』創造プロジェクト」の2―4回生12人が、今年度も黒井を訪れる。学生は「市民が話し合う場をつくる力」を養う。大学生が提案する活性化アイデアを、住民が実践する性質のものではない。「市民討議会」という手法を参考に、地域内の話し合いの在り方を変えることで、住民自身でより良いまちにするための基盤をつくる助けになりたいと考えている。指導する只友景士教授(57)に話を聞いた。

―「市民討議会」とは。その必要性は

ドイツで生まれた住民自治の手法で、会議の出席者を無作為抽出で選び、「ミニ公共」をつくる。裁判員制度のまちづくり版のようなものだ。日本では、住民基本台帳ネットワークを使う。例えば、黒井で実施するならば、住基台帳から無作為抽出で黒井の住民を選び、出席依頼通知を出す。代表ではない、普通の市民で構成する「ミニ黒井」ができる。関係団体の代表者が集まる会議とは質が違い、より住民意見が反映される。まちづくりを考えるのは、「高尚な志がある人でなければ駄目だ」「見識がある関係各団体の代表者だ」という考えが、市民参加のハードルを高くしている。

市には、市、市職員、利害関係団体の代表者の各種会議があり、そして議会もあるが、市民感覚で民主主義を補完する。現代の民主主義を活性化するために、必要だ。

―住民の声で地域をつくるのは重要だ

住民がこんなまちになってほしいという望みをかなえることは大切だ。一方で、その望みを「誰かがプレゼントしてくれる」とサンタクロースを待つような市民感覚では困る。主体的にまちづくりに関わる人を増やすことが肝要だ。黒井のまちを良くする策を話し合い、アイデアが出たとする。それを自治協議会役員がやればいい、市がちゃんとやればいい、ではなく、自治協や市にやってもらう部分だけでなく、「私たち」「私」ができることも考える。話し合いの進行役の問いかけにより、そういった考えは生まれていく。議論をすると、人は行動しだす。市民主体の行動が生まれる。

―具体例を聞かせてほしい

2013年に滋賀県守山市と福知山市に入った。守山市は2014年に条例化し、市民意見を聞く手法として定着している。福知山市は「未来を描く!福知山100人ミーティング」として実施し、現在は、若者の意見聴取に使われている。

―黒井で一足飛びに「市民討議」まで行くのは難しいかもしれない。市の支援も必要だ

まずは、普段の会議で「見ない顔」が集まる、話し合いの場を持つところから始めたい。例えば、PTA、親子連れ、30―40代の参加者が中心とか。秋の政策学部生のワークショップ時は、ぜひ「見ない顔」の皆さんと話し合いたい。発祥のドイツは、出席者に報酬を支払う。日本では、「おいしいスイーツを用意しています」という例が散見される。スイーツ、おやつを食べながらお話ししましょう、でいい。

住基ネットからの無作為抽出、会議の案内通知は市が行う。個人情報保護上、それが必要だ。私は、財政学者だ。「公共部門がもっとしっかりし、国民のためになる財政活動を」と考えている。公共部門はもっと市民が頑張れるように、市民を支えなければいけないと考える。それがなければ、地域課題を解決できない。市民の側で頑張ったらいい、ではない。公共が関与する必要があり、関与してこその「市民協働」だ。

ただとも・けいし 滋賀大学経済学部教員を経て、2011年4月から龍谷大学政策学部・教授。専攻は、財政学、地方財政論。守山市市民参加と協働のまちづくり推進会議・委員長、滋賀県下水道審議会・委員、大津市社会教育委員など。

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