脈々続く山里の”子授け法要” 現在進行形のふしぎな話 「懐妊」話、数知れず

2020.02.12
ニュース丹波篠山市地域地域

小さなお堂をいっぱいに埋めた人々=兵庫県丹波篠山市大熊で

兵庫県丹波篠山市大熊にある「瑠璃寺・薬師堂」で11日、本尊の薬師如来に子授けなどを祈願する法要が営まれた。そのご利益は「絶大」とされ、法要後、すぐに子を授かったといったエピソードは数知れずというから驚きだ。今年は例年の2倍近い人々が参拝。わずか18戸約60人の集落で管理するお堂に市内外から150人近くが訪れ、読経とともに手を合わせ、静かに祈りをささげた。当然、科学的な根拠は一切ない、山里のふしぎな話。信じる信じないはみなさん次第ー。

今年も懐妊や安産祈願のほか、願いが叶った報告の「願済(がんさい)」にと、地元のみならず、県内他地域をはじめ、遠くは茨城県や愛媛県などから参加があった。

開始30分以上前から小さなお堂は人でいっぱいになり、外のいすも足りなくなるほど。運営する地元住民らが急きょ、いすを追加する場面も見られた。

法要で供えられる「もっそ」

願済に訪れていた30歳代の男性は、「昨年、母が祈願に来てくれて、すぐ後に妻が妊娠。無事、生まれました。ご利益かどうかはわからないけれど、お礼参りはしておかないと」とほほ笑む。

また、不妊治療がうまくいかず、一昨年、初めて法要に参加した直後に子を授かり、昨年は願済に来ていた30歳代の女性の姿も。「もう一人お願いしたいと思って来た。今年はすごい数の人」と目を丸くしていた。

地元住民によると、昔から集落の中で結婚している家庭は必ず子どもができ、「何年も子どもができなかった夫婦が祈願後、すぐにできた」「職場の同僚の依頼で住民が祈願したところ、子を授かった」―などの逸話は数多く、しかも現在進行形。「本当にここのお薬師さんは不思議」「これからも守っていかなくては」と口々に話す。

ちなみに住民から教わったポイントは、「法要後はどこにも寄らず、まっすぐ家に帰る」こと。その理由は、「立ち寄った先に子ができてしまう」からだとか。

お堂に入りきらず、境内にもたくさんの人があふれた

気になる法要には、ご本尊の両脇に「もっそ」と呼ばれる供物が用意される。木桶の中に、乳房を模したドーム状の蒸し米や、女性器を象徴するわらで編んだ輪が配され、その輪の中には男性器の象徴として徳利(とっくり)が置かれる。ほかに豆腐の串刺しや大根や白豆などもある。供物というよりも、“まじない”の道具のようだ。

ちなみにお布施は「お気持ち次第」で、決まりはないそう。

法要が始まると近くの小林寺の飯田天祥住職が般若心経などを読経。その後、「オンコロコロ センダリ マトウギソワカ」と、薬師如来の真言を全員で唱える。法要が終わるとお札やもっそに使われた蒸し米の一部などが配られる。

瑠璃寺は、平安時代、僧侶・円仁が病気療養中に、「まことの心があるならば、大熊村に至りて薬師如来を迎え奉るべし」という夢を見たことから、この村を探し当てて寺を建立したと伝わる。また、源義経が戦勝祈願をして平家を滅ぼしたという逸話もある。

いつのころからか子授けにご利益があるとして知る人ぞ知る祈願場所になり、特に宣伝していないものの、毎年、口コミなどで遠方からも参拝がある。

村ぐるみで法要を続ける松笠康一副自治会長(63)は、「少子化の中でたくさんの人が『子どもを授かりたい』と訪れてくださる。なんだかうれしいですね」とほほ笑み、「特に地元がうれしいのは願済の報告を聞くこと。今年はたくさん懐妊祈願に来られたので、来年が楽しみです」と期待していた。

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