プリン通して「ひきこもり」支援を 元保健師「社会復帰の足場に」 特産の黒豆使いネットでも人気

2020.03.13
ニュース丹波篠山市地域地域

「丹波篠山黒豆プリン クロちゃん・マメちゃん」

兵庫県丹波篠山市のJR篠山口駅構内で開かれている“起業塾”「篠山イノベーターズスクール」の3期生で、元保健師の山本季代子さん(63)=同市川北=が、自宅を改修した「和み工房」で、農場で採れた同市特産の黒大豆をぜいたくに使った「丹波篠山黒豆プリン クロちゃん・マメちゃん」を販売している。黒大豆の豆乳や煮豆を活かしたコクのある味わいと、かわいらしい動物を描いたデザインの瓶が好評で、全国から注文が殺到している。一方、自身の子育てや仕事上の経験から、「ひきこもりの人たちが、社会へ『巣立つ』ための就労支援ができる施設にしたい」と考えている。

黒大豆を使ったプリンを販売する「和み工房」の前に立つ山本さん=2020年2月26日午後4時4分、兵庫県丹波篠山市川北で

プリンは2種類で、黒い豆柴(犬)が描かれた「クロちゃん」(税込450円)は、甘さを控えた上品な「大人の味」。猫のデザインの「マメちゃん」(同)は、シンプルな味わいが楽しめるカスタードプリンで、煮豆との相性がよく、子どもから大人まで、幅広い世代から人気を集めている。北は北海道、南は沖縄からネットで注文があり、10日間でおよそ1000個を売り上げた。

季代子さんは、生まれ育った岡山県と、同市川北出身の夫、隆さん(65)が働く大阪府で、保健師として約40年間勤務。ひきこもりの相談、児童相談、虐待対応などの仕事を請け負いながら、自身は3人の子を持つ母親として奮闘する毎日を送っていた。

そんな中で、ひきこもり支援について、相談窓口はあっても社会復帰を果たすための足場となる事業所がないことに疑問を感じていたという。

「大事なのは、本来の力を引き出すために、体を動かしながら自己肯定力を上げ、他人との関係性を回復していくこと」と言い、そのきっかけづくりとして「農」と「食品加工」を通じて支援する事業所の立ち上げを考えた。

定年退職後、神戸市内で農業技術を体得し、2017年に同スクールへ入学。誰でも作れて、年間を通して食べられるプリンの販売加工を行う事業所づくりを着想し、農業経営について学んだ。

菓子作りの経験はなかったが、国内の名店のプリンを食べ比べたり、大阪府内の店舗に、保存方法や作業工程を”聞き込み調査”するなど研究を重ねた。

現在は、同地区内にある農場(70アール)で黒豆を栽培し、隆さんや自身の親せきたちと共に店を切り盛りしている。ひきこもりの就労場所としての環境整備に向け、都市部から来た就労者が滞在できるよう、宿泊所や、ひきこもり支援の専門家との連携も模索している。

「『支援する側』『される側』という立ち位置ではなく、あくまで『店のスタッフ』として、しっかりと給料を払い、イベントに行って商品を販売したり、商品のアイデアも出してもらったりして、対等な関係を築けるような施設づくりを目指す」と言い、「ここがゴールではなく、ここでの経験をもとに社会進出のきっかけをつくる場にしたい」と話している。

プリンは店舗とホームページから購入可能。問い合わせ、注文はホームページ(https://kuromame-purin.com)。

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