兵庫県丹波篠山市監査委員はこのほど、随時監査の対象として、今年4月から5月にかけて新型コロナウイルスの影響による緊急経済対策として市が実施した「半額グルメ持ち帰りキャンペーン」を監査し、結果を公表した。公平性や事業途中での予算増額、市民への周知不足など「多くの課題や問題点が明らかになった」とし、今後の施策への反映を求めた。
同キャンペーンは、テークアウト商品を市民が事業登録店舗で購入した際、その場で半額にするもの。残る半額は店舗が後日、市に申請し、補助金を交付する仕組みで、4月20日―5月12日の23日間にわたって展開された。
登録店舗は開始時点で43店舗だったが、最終的に105店舗に。予算は当初500万円だったが、市民の利用が相次ぎ、最終的に10倍を超える約5600万円となった。
報告書で監査委員は、▽当初から登録した店舗と後に登録した店舗で補助金交付額に大きな差がある▽従来の補助金事業は上限額を定めるが、今回は開始時に上限を定めておらず、特定の店舗に多く補助金が交付されている―とした。
登録店舗の情報がネットサイトや市本庁、各支所でしか閲覧できないことに触れ、「特定の店舗、特定の市民に補助金が使用されたことは、計画性なき実行と公平性の観点から問題がある」と指摘し、「まずは登録店舗を把握し、市民に周知してから実施すべきだった」とした。
また市は事業途中の5月8日に予算を増額し、販売額が200万円に達した店舗は「その時点でご遠慮いただく」としたが、監査委員は、「ならばなぜ当初から上限を設定しなかったのか、また、上限決定後も要綱に規定されていない」とした。
事業当初の「3000円以上の利用で半額」(後に2000円以上に減額)という設定についても、「一人暮らしや経済的に余裕がない人も利用しやすい設定にすべきだった」とした。
結論では、「迅速な対応と必要な支援として大変、好評だった」と理解を示しつつ、これら多くの課題があったことも指摘。新型コロナの拡大状況によっては、今後、新たな補助事業も想定されることから「公平性の確保と補助効果を見極め、適正な補助金交付を行い、今後はこのような事業執行がないことを強く望む」と結んだ。
畑利清代表監査委員は、「税金を使う事業は、市民誰もが公平に恩恵を受けるべき。行政は市民を平等に扱えるような事業を行ってほしい」とした。
報告を受けた市は、「打撃を受けていた飲食業をなんとか救おうと、スピード感が重要と考えた。結果的にそれなりの支援ができたと思うが、全く初めての取り組みだったため、監査意見を今後の取り組みに生かしたい」とした。
登録店舗中、最も多く補助金が交付された店舗は約345万円。最も少なかったのは約8000円。登録したものの事業展開前にキャンペーンが終了し、交付ゼロの店も3店舗あった。
交付額は、200万円以上が6店舗、150万円以上―200万円未満が2店舗、100万円以上―150万円未満が6店舗、50万円以上―100万円未満が19店舗、1円以上―50万円未満が69店舗だった。