”傾聴ボラ”にもコロナ余波 距離、マスク「感情伝わりにくい」 はがきで「おしゃべり」模索

2020.06.16
ニュース

傾聴活動の自粛の中、はがきのやり取りをしている上田さん=2020年6月3日午前10時31分、兵庫県丹波篠山市犬飼で

一人暮らしのお年寄り宅や施設に出向き、話し相手になる「傾聴ボランティア」―。兵庫県丹波篠山市で活動しているグループ「ラビット」(上田和夫代表、11人)が、新型コロナウイルスの影響で「新しい生活様式」が求められる中、対人によるコミュニケーションが取りづらい状況にあることから、利用者とはがきのやり取りを始めている。

 利用者はお年寄りが多く、感染防止のため、3月から活動を自粛しているが、長期の自粛で利用会員が減少。再開してもマスクを着用してのコミュニケーションや対人距離の取り方の難しさが課題になっている。活動が継続できるか不安になる中、その打開策の一つとして、はがきによる「おしゃべり」を思いついた。
 利用会員と心を通わそうと月に2回、はがきを出している。顔写真を載せ、日常のことを書き添えて送っている。返事が来ることもあり、好評だという。
 同グループは2012年から活動開始。利用は登録制で、ボランティアが2人1組で利用会員宅を訪問し、1時間程度、利用会員の若かりし日のことや、不安や悩みなどの話を聞く。主にケアマネージャーを通して、同市社会福祉協議会に利用申し込みが入る。
 昨年度当初の利用会員数は10人ほどいたが、入院したり、都市部の子どもの自宅へ移住したり、亡くなるなどして減少するとともに、新規入会がなく、現在は2人に。
 7月からの活動再開を予定しているものの、傾聴は通常、屋内で行い、「新しい生活様式」でいう身体的距離の確保やマスクの着用が必要なため、上田代表は「距離を空けて、マスクをしたまま会話しても感情が伝わりにくく、本当に心が通い合う関係になるだろうか」と心配。「新しい時代に応じた、人と人との距離の取り方をどうするのか、傾聴活動に大きな課題が突き付けられている」と話す。
 その上で、「3密を排除した生活を習慣づけることが要求され、高齢者にとっては暮らしにくい世の中になったが、細心の注意を払いながら、高齢者の心の支えとしての傾聴活動が広がっていけば」と期待している。

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