条例違反で養鶏事業者の氏名公表 農地法違反で県も調査中 地元「ルール通り対応を」

2021.02.14
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兵庫県丹波篠山市は、同市内の養鶏事業者が市環境保全条例の基づく改善命令に従わなかったなどとして、市のホームページや広報誌で事業者の氏名を公表した。事業者と地元住民の間では以前から臭気などを巡って問題が起きており、酒井隆明市長は、「氏名の公表は慎重に配慮してきたが、協議を続けても前向きな行動が見られず、市民の生活環境を守る市の責任として公表せざるを得ない」とした。

市によると、事業者は条例で定める指定家畜飼養施設の設置届を提出しておらず、施設と近隣住家との距離規制基準にも違反しているほか、近隣住家との境界上で、悪臭防止法で定める基準を超えるアンモニアが計量されており、それぞれ改善勧告や命令を行ったにもかかわらず従わなかったという。また、鶏舎を建てている土地は農地を無断転用していることから、「農地法などにも違反している」とした。

一方、取材に対して事業者側は、▽設置届は提出済み▽近隣住家の同意は得られている▽アンモニアは農園の調査では基準内▽農地は農業委員会から許可を得ている―とし、「公害はなく事実誤認。裁判の結果も出ていない」と主張した。

事業者は昨年末、移転を検討していることを市に通知したことから、市が期日を決めて地元と協議の上、合意書を作成することを求めていたものの、協議がなかったことについては、「住民側の代表である弁護士に合意案を出しており、氏名公表についての意見書も市に出しているが返事がなかった」とした。

事業者の主張に対し、市は、「当時の条例では、同意があっても規制基準内に鶏舎を建ててはならないし、届けも出されていない。条例に即して養鶏をされることはなんら問題がないが、違反があり、地元とも協議がなされていないため公表した」とした。地元自治会も、協議がないことなどから、「合意案に応じることはできない」としている。

一方、農地法違反について市農業委員会から違反報告を受けている県丹波農林振興事務所は、丹波新聞社の取材に対し、現在、調査を進めている状態にあることを明らかにした。制度上は調査を終えた段階で期間を定めて是正勧告を行い、従わない場合は原状回復を命令。それでも改善されないと、刑事告発するか、違反原因となっている鶏舎を行政代執行で撤去することになる。

市農業委員会によると、養鶏事業者が鶏舎を建設している土地は許可を得ずに農地の上に本格的な構造物を建てているため、農地の無断転用にあたるという。

違反を認識した市農業委員会は昨年10月2日、事業者に対して10月末までに違反状態を解消するよう是正勧告。移転を検討している旨を記した書類は提出されたが、期限までに対応がなかったため、11月4日に県丹波農林振興事務所へ報告した。

同事務所は、「報告を受け、法律に沿って実態把握や必要な対応について調整しているところ」とした。

氏名公表を受けた地元自治会や鶏舎の近隣住民らはこのほど記者会見を開き、事業者との間での問題について説明。農地法違反にも触れ、「県には昨年11月に自治会として要望書を提出している。きちんとルール通り対応してもらいたい。今後も働きかけを続ける」と表明した。

問題を巡っては事業者と市の間で裁判が行われているほか、県公害審査会で事業者と住民の調停が行われている。調停では、3月末までに審査会が調停案を示し、案に沿って協議を進めていくことになっている。

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