旅することなく四国八十八カ所霊場巡礼の功徳が得られるとされる「お砂踏み」が兵庫県丹波市青垣町の常瀧寺(伴知憲住職)境内にでき、10日、開眼法要が営まれた。先代住職の遺品整理中に出てきた砂を、88カ寺の名を刻んだ石板の下に収めている。お砂踏みは、屋内に設けられることが多く、県内で屋外でお砂踏みができる寺院は珍しいという。知る人ぞ知る隠れた紅葉の名所で、紅葉の木々に抱かれる位置に建立した。
方丈の改修に際し、先代住職の故・泰潤師の部屋を片付けている時に、88個の薬包紙に包まれた砂が出てきた。伴住職は何も聞かされておらず、先代が集めていることも知らなかった。先代の供養に「お砂踏み」整備をと考え始めてほどなく、伴住職が39歳で臨んだ行の見届け人、13番札所・大日寺(徳島市)の先代住職(故人)が夢枕に立ち、寄進に踏ん切りがついた。
真っ赤に紅葉するモミジ28本が植わる山裾に、霊場を設けた。弘法大師の修行像を囲むように、88枚の石板を配置。「徳島(発心の道場)」「高知(修行の道場)」「愛媛(菩薩の道場)」「香川(涅槃の道場)」の石碑を建立した。お砂踏みを終えた参拝客に授与するお札も用意した。
泰潤師は40―60歳まで、真言宗大覚寺派の本山、大覚寺(京都市)の僧侶養成機関・伝灯学院の指導者で、修行中の若者を引率して四国に赴く機会が多く、その際に集めたのではないかと、伴住職は推察している。
「ひょんなことから整備ができた。人が集まる寺にしたい思いがある。大イチョウ、モミジ見物、また近所の人にはウオーキングを兼ねて参拝してもらえれば。5分で巡礼できる」と笑っていた。