えべっさんに謎の砲弾?それとも爆弾?―。9、10日と「市島えびす」が行われる兵庫県丹波市市島町市島の恵比須神社境内に、大砲の弾丸、あるいは爆弾の弾頭とおぼしき物が置かれている。これは一体何なのか、なぜ、いつからここにあるのか、はっきりと詳細を知る地元の人はいない。
高さ約85センチ、直径約35センチの釣り鐘状の形。薄い鉄板でできており、中は空洞。先端部に起爆装置の「信管」が付いている。戦争関連の遺物であることは間違いなさそうだ。
「子どもの頃から境内にあり、『大砲の弾』と呼んでいた」と話すのは、地元の吉見直樹さん(68)。「いったん境内から姿を消したことがあり、骨董屋に売られたが、その日のうちに骨董屋に不幸があり、すぐに戻ってきた、と聞いた」とも。「大砲の弾」だとすれば、いつの時代の物なのだろうか。戦中にも置かれていたものならば、供出金属の対象にならなかったのも不思議だ。
第2次世界大戦中、戦艦「榛名」の乗組員で、砲手だった松岡緑さん(95)に、現物の写真を見てもらったところ、「戦艦主砲の三式弾だ。見覚えがある」との返事。三式弾は、敵の飛行機を撃つための大砲に使われたものだと教えてくれた。
一方、現地を確認した市島史実研究会会員の井上正直さん(79)は、「おそらく、第2次世界大戦中に作られた国産の爆弾の弾頭だろう」と見解が異なった。「先端部分の貫通穴は運搬用だと思う。未使用の爆弾が残っているのは珍しいのでは」と話す。
吉見さんによると、当時は境内の別の場所にあったそうだが、本殿前の塀の左側に移された。そばには「日本精神」と揮毫された大きな石碑が建てられているが、1941年(昭和16)に旧吉見村青年団が新青年団の発展を祈念して建てたものであり、砲弾あるいは爆弾との関係は薄そうだ。
吉見さんは、“遺物”を興味深く眺めつつ、「市島えびすの参拝の際に、みなさんに一度注目して見てもらえれば」と話している。