新型コロナウイルスの影響で生活困窮に陥っている兵庫県丹波市柏原地域の人を支援しようと、集めたコメを配分する「お米deつなぐ助け愛プロジェクト」を一昨年、昨年と展開した「柏原地域支えあい推進会議」。「保有されているお米に余裕のあるご家庭はありませんか」―。同地域を中心に寄付を呼び掛け、一昨年は約630キロ、昨年は約800キロが集まった。同会議の田中義人委員長(71)は、「多くの支援のお米に、皆さんとの気持ちのつながりを強く感じ、心が温かくなった。今年も状況を見ながら取り組んでいきたい」と話している。
支援米は、市社会福祉協議会を通じて希望する生活困窮者の元へと配分している。一昨年に集めた分は全量配分済みで、昨年は335キロを配った(昨年11月25日時点)。今後も必要とする人に随時配っていく。
昨年は、新米の収穫時期に合わせ、9月下旬から10月上旬にかけて募った。2年目ということもあり、早速多くの農家から新米や保有米が届いた。その中で非農家住民が「少なくて申し訳ないねえ」と袋に白米2升を詰めて持参したり、「取り組みをうわさで知った」とした町外の農家が支援米を寄せたケースもあった。地元のJA丹波ひかみも玄米で届いた支援米を無償で精米するなど同会議の熱い思いに応えた。
同会議は、柏原町自治会長協議会、柏原自治協議会、新井自治協議会、柏原民生委員児童委員協議会が中心となり2018年に組織。それより2年前から地域支えあい推進員と南部地域包括支援センターとの協働で、医療や介護、防災、共助など地域課題の解決に向けて講演会や勉強会を定期的に開催していた。
知識を深め、情報共有を図っていた最中、新型コロナの感染が拡大。全世界の脅威となり、不要不急の外出や営業自粛が求められ経済は停滞した。このような状況下、同推進員と新型コロナの影響を話し合っている中で、市内でも想像以上に新型コロナの影響による生活困窮者が多いことを知った。
同社協によると、休業や失業などで生活費に悩んでいる人に向けた「生活福祉資金」の貸付申請は例年1、2件。しかし、新型コロナの状況を踏まえ、特例貸付として対象枠を拡大(一世帯一回上限20万円を無利子で貸付)したところ、84件(一昨年5月末時点)もの申請があった。
そこで同会議は、「丹波は農家が多いし、今もなお、隣近所のお裾分けの風習も残っている」と、コメを集めて配ることを思いついた。
昨年11月末時点で同市内における特例貸付の申請者数は622件と増大している。
「田舎はつながりが濃い分だけ、『知られるのが嫌』と、困っているのに声を上げにくい状況にある。新住民の皆さんとは反対につながりが薄いので、両者共に状況の把握が難しい」と田中委員長。「ただ、息の長い活動にしていくためにも、やりがいを感じながら焦らず共感を広げ、できることから実行していく。プライバシーの観点から、『ありがとう』の声は直接聞けないが、今年も取り組みを鈍らせることなく、『助けて』と言える地域を目指して活動していきたい」