竹細工に親しむ 近藤忠勝さん(丹波市)

2022.02.27
たんばのひと

近藤忠勝さん

ものづくりの“腕”生かす

50年以上にわたって営んでいた鉄工所を譲り、77歳で竹細工を始めた。大河ドラマのタイトルやえと、百人一首、偉人の名言などを竹の表面に転写して彫り、彩色を施した置物をこしらえている。竹の切り出しから、1つの作品を仕上げるのに5年ほどかけるからこそ、「どの作品も愛着がある」と目を細める。

ものづくり一筋に生きてきたことから、一線を退くと、手を動かす作業がない日々を寂しく感じていた。ある日、近所を散歩していると、切られた竹が積まれているのを見た。「これで何か作れるかもしれない」

もともと、誰かの手ほどきを受けるのは苦手な性分。「良い、悪いではなく、自分なりに作ってみるか」―。そう思って我流で作品を作り始めた。

手に入れた竹を縦に半分に割り、水分を飛ばすのに4、5年は乾燥させる。そこから字や絵を竹の表面に転写し、彫刻刀で彫り進めていく。

絵の具で彩色した後、竹に含まれる油分を飛ばすためにバーナーで表面をあぶる。「バーナーは鉄工所で使っていたもの。経験が生きますね」と笑う。仕上がった作品の表面は薄い茶色で光沢があり、何年たっても輝きを放つ。

数年前に体調を崩し、作品作りから遠ざかっている。手元にあった作品の多くを知人に譲ったが、それでも工房には力作がずらり。コロナ禍が明ければ、作品展をしたいという思いがある。

申し分ない出来栄えの作品は「数えるほど」という。その1つは、書道に親しむ妻の喜代美さんが書いた持統天皇の和歌「春過ぎて夏来にけらし白妙の―」を彫った作品。「妻と二人三脚でこしらえた作品ですから」。86歳。

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