バングラ支援し37年
南アジアの国、バングラデシュで暮らす子どもたちの支援にと、自費や、寄付を募って学校を建て続けて今年で37年。建設した学校は36校、卒業生は数千人に上る。「財布はすっからかんでも、不思議と困ったときには助けてくれる人がいる。ありがたいこと」とほほ笑む。北海道ほどの面積に約1億6400万人が暮らす国。後発開発途上国に位置付けられ、貧困に苦しむ人も多い。
岩下さんは同国の人と知り合い、貧困の現状を知ったことから支援を開始。子どもたちの教育が重要だと感じ、NPO法人「P・U・S」を結成して学校建設を始めた。
共に活動する最愛の妻・啓子さんや、仲間たちにも支えられ、学校建設と並行して通学費用の面倒を見る「里親」も募ってきた。「なぜ続けているかと言われたら、子どもたちの笑顔が見たいから」
コロナ禍は、バングラデシュにも暗い影を落とす。工場が停止するなど、ただでさえ少ない収入が絶たれたことで、「口減らし」のために、幼い子どもを結婚させる「児童婚」が社会問題になっている。
この問題に対応するために、中学生の女の子に特別奨学金を提供。「100人以上は児童婚を食い止めたけれど、できることは限られている」と話す。
円安やロシアのウクライナ侵攻による物価高騰により、学校建設の費用も上昇し続けるなど、困難な状況は続く。
それでも、「いい加減なように思われるかもしれないけれど、『何とかなる』と思っていると、何とかなる」とにっこり。「これからも自分たちにできる範囲で、変わらず支援を続けていく」。73歳。