こつこつ「木目込み」 右手で丹精込めて 色とりどりの作品展

2023.02.14
地域

木目込み作品展を開いている植野さん=兵庫県丹波市氷上町成松で

左半身不随と高次脳機能障害のある、兵庫県丹波市の植野宏美さん(56)が、こつこつと作り上げてきた「木目込み」作品30点を、同市氷上町の中兵庫信用金庫本店で飾っている。自由が利く右手だけで布を切り、目打ちで布を押し込むなど、花鳥風月や歳時記などをモチーフに丹精込めて仕上げた作品がずらりと展示されている。2月末まで。月―木曜日は午前9時―午後3時、金曜日は午後6時まで。

「木目込み」は、木製の日本人形に、衣服のしわや模様の形に合わせて筋彫りを入れ、その溝に目打ちなどで布の端を押し込み、まるで衣装を着ているかのように仕立てる伝統技法。これを応用して、田舎の風景をはじめ、フクロウやエナガなどの鳥、ボタンやバラなどの花、鯉のぼりやひな人形などの歳時記といった多彩なテーマで、色とりどりの端切れを組み合わせ、作品を仕上げている。

2016年2月、脳出血で倒れ、後遺症が残った。ふさぎ込んだ気持ちのまま、3年前、リハビリのためにと、紹介された木目込みを始めた。もともと手先が器用だったこともあり、熱中するまでに時間はかからなかった。

これまでに仕上げた作品は約420点にものぼる。夫・利雄さん(60)の義姉のバックアップも受けながら仕上げる緻密で丁寧な作品は評判となり、友人や知人、さらに輪は広がり、宏美さんの知らない人からも注文が舞い込むようになった。「注文を頂くたびに誰かの役に立てていることを実感でき、やりがいとモチベーションアップにつながっている」とほほ笑む植野さん。

作品作りで手指を動かし続けていることが脳の活性化につながっているのか、歩行訓練を担当する理学療法士から、「最近、会話のスピードや反応が速くなった」と驚かれているという。

植野さんは「ハンディキャップを抱えてしまったが、木目込みを通じて人とのつながりができ、気持ちも前向きになれた。私の作品が同じ境遇の人たちを少しでも元気付けることにつながればうれしい」と話している。

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