市発足後初の文化財に 神社本殿と観音像 「歴史的価値高い」

2023.06.14
地域歴史

丹波市の有形文化財(建造物)に指定された舟城神社の本殿=2023年5月19日午前9時、兵庫県丹波市春日町長王で

兵庫県丹波市内有数の大規模な神社建築とされる「舟城神社」(春日町長王)の本殿と、一木造(いちぼくづくり)で彫られた三寳寺(柏原町大新屋)の本尊「木造十一面観音立像」が、市制初の市指定文化財(有形文化財)に指定された。指定は4月20日付。市には旧町から受け継いだ216件の市指定文化財があるが、市発足後は新たな指定はなく、市は両者を「歴史的価値が高い」と評価した。5月30日、山南住民センターで両寺社に指定書を交付した。

 

建立の歴史などが記された棟札を持つ村山宮司

舟城神社は1749年(寛延2)、大工の播州多可郡塚口新田村の飛田平蔵が建築。棟札が保存されており、建築年だけでなく改造年も明らか。本殿は北面しており、神社としては珍しいという。創建は1446年(文安3)で、現在の本殿は再々建。

近世は「祇園牛頭(ごず)天王社」と称し、近くに牛の市場があったことなどから「牛馬の神」として信仰が厚く、農家が牛を連れて参拝したという。

また、1857年(安政4)に本殿正面に増設された向拝(こはい)張出部が、高い位置で優美な曲線を描いており、本殿をより大きく伸びやかに見せていることから、市は「建物に付加価値を与えた改造」とする。

村山義人宮司(88)は、「棟札には、建立の事情や携わった人の思いが記されている。文化財指定により、建物だけでなく、当時の人の心も後世に残せると思うので、ありがたい」と話している。

丹波市の有形文化財(彫刻)に指定された三寳寺の木造十一面観音立像(丹波市教育委員会提供)

三寳寺の木造十一面観音立像は、頭頂部から両足までをヒノキとみられる針葉樹の木材から一木造で彫られ、表面は黒漆で塗られている。裾を引き上げて足首を見せるといった9世紀ごろの表現が残る一方で、身にまとう衣の彫り方や、上品な口元の作りなど穏やかな作風から、10世紀末から11世紀初頭に作られたと考えられるという。

頭上には十一面の顔があり、左手に水瓶(すいびょう)、右手に錫杖(しゃくじょう)を持っているが、両肘以下の腕や持ち物は後の時代に補われている。市は「歴史的にも美術的にも極めて重要。厨子内で適切に管理されており、今後の保存活用にも問題はない」としている。

50年に一度、開帳される秘仏で、昨秋に御開帳された。門脇知眞(ちしん)住職(42)は、「総代を中心とした多くの人の尽力があって、文化財に指定していただき、ありがたい」と話している。

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