町中に出没するシカ 食害増え「どんどん人家に接近」 朝方に闊歩する姿も

2023.06.17
地域

葉をほとんど食べられた丹波新聞社のハイビスカス=兵庫県丹波市柏原町柏原(本町)で

兵庫県天然記念物の大ケヤキ「木の根橋」に近い、同県丹波市柏原町の丹波新聞社の玄関脇に置いていたハイビスカスの葉が、ごっそりなくなっていることに気付いた。病気かと思いつつ植え込みに目をやると、鋭利な刃物で花を刈り取られたようなアジサイ、バラも同様だ。「この切り口は、シカの仕業」と目星を付け、周辺を見て回ると、同町本町―屋敷集落のあちこちにシカに花をかじられ、茎と葉だけになった草花があった。ふんも確認した。食害が柏原中心市街地の「都会」でも起こっている。「どんどん人家に近づき、行動範囲を広げている」と、シカの存在に気付いている人たちは警戒している。

濃い線が食害の痕跡確認ゾーン

本町、屋敷の目の前は、柏原八幡宮がある入船山。同山から里へ下り、市街地のメイン道路で、木の根橋へと続く篠山街道(市道第46号線)を横断して本社に来社し、「食事」をしたとみられる。本社の食害被害は初めて。昼間は交通量が多い同道路も、深夜から明け方はひっそり静まり返っている。同山に鳥獣防護柵はない。

篠山街道を挟んで北側の本町集落内は、「はちまん広場」沿いに南北に走る市道第33号線、その西の第32号線で被害を確認。プランターに鹿よけのネットを張っている家もあった。

新聞配達をしている同集落に住む能勢壽行さんは、「午前2時台に、はちまん広場で2頭のシカを見る」と証言する。自宅前の市商工会柏原支所前のプランターのパンジーはシカに食べられたため、能勢さんは昨秋、ハーブを植えた。「シカが好まなさそうなものを植えた。緑色のままで味気がないけれど」と苦笑いする。

篠山街道の東の屋敷集落のある家では、今年初めて軒先のプランターに植えていたキュウリやキキョウが食べられた。隣の空き地に、真新しいふんが大量に落ちている。

花が鋭利な刃物で切られたような「頭のない」アジサイ

同集落の村岡孝司さんは、まちを歩く観光客の目を楽しませようと植えたアジサイをかじられた。2020年9月には、奥村川にかかる橋を渡り、村岡さん宅周辺を午前8時過ぎに歩くシカを撮影したこともある。妻の君代さんは、「ここ2、3年、平地で見る。去年の秋からの食害が特にひどい。今の時期は午前4時ごろ。毎日2頭見る」とこぼす。

柏原八幡宮の千種正裕宮司に、丹波新聞社も食害に遭ったことを伝えると、「はー。道路を渡りましたか」と驚きの声。「近年、シカが増えて下草を食べ尽くし、社叢の植物の種類が明らかに減った。もう、シカが食べない植物しか残っていない」と、植生への悪影響を切実に語り、餌を求めて行動範囲を広げているとの見方を示した。

屋敷の住宅地に現れたシカ(村岡さん提供)

有害鳥獣捕獲担当の市農林振興課に通報した。「そんな町中にも出るんですか」と声のトーンが変わった。同課によると、農地が少なく住宅が建て込んでいる、市内では都会の柏原地域は、有害鳥獣捕獲の申請数が他地域と比べ少ない。

問題の入船山は、鳥獣保護区域で、申請に基づく駆除ができないことはないが、積極的にする場所ではないという。

森林生態学が専門の藤木大介・県森林動物研究センター主任研究員は、「捕獲と柵の設置が対策の基本。鉢を食べられにくい所に移すのも手。雑草より、きれいな花が咲く、楽しみにされるものを好んで食べる。バラ科やアジサイ、キキョウは好き」と話している。

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