築86年の旧村役場 役割変え地域と歩む

2023.08.30
たんばの世間遺産地域歴史

白い姿が目を引く旧小川村役場。現在はみつみ福祉会の「みらい館」=兵庫県丹波市山南町奥で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市山南町小川地区にある「旧小川村役場」です。

今から86年前の1937年(昭和12)に竣工した、白い外壁が目を引く旧小川村役場。行政の建物として役割を終えた後も、山南町歴史資料館や企業の倉庫などとして使われ続け、現在は社会福祉法人みつみ福祉会の就労継続支援B型事業「みらい館」として地域と共に歩んでいる。

「小川村誌」(昭和56年復刻)などによると、当初、役場庁舎は小学校の一部を使用して事務を行っていたが、「之は真に間に合せの庁舎なれば狭隘不便」で、1891年(明治24年)の村会で建築を決議。個人からわらぶき家屋を購入して現在地に移築した。

その後、たびたび修理を加えていたが、年月の経過とともに建物が破損するなどして、執務に差し支えるようになったため、1934年(昭和9)に改築を決議。ところが、その年の9月に大暴風による凶作で工事を延期し、ようやく37年に竣工にこぎつけた。これが今に見る建物だ。

地域住民によると、かつては建物の前がグラウンドになっており、「遊び場」と呼ばれて親しまれていたという。遊具もあり、子どもたちの憩いの場所だった。

「丹波市の歴史的建造物Ⅰ」によると、木造平屋建ての寄棟造。建設当時の設計書が残っており、事務室や会議室、村長室、応接室、議員控室、宿直室などがあったことが確認できる。また、建物西側には小使室や物置、便所などが入った別の建物があり、両者は渡り廊下でつながっていたという。

この設計書には、玄関が現在とは異なった形状で描かれている。市の調査では、後に改造されたものであるかどうかは確認できなかったという。同文献は「数少ない旧村役場の遺構として重要」としている。

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