親子で紡ぐ「眼鏡の歴史」 老舗卸業の男性が収集品展示 「日本の技術力感じて」

2023.08.31
地域

父の幸男さんと共に収集した眼鏡を展示している西垣さん=兵庫県丹波篠山市河原町で

兵庫県丹波篠山市内で80年以上続く老舗眼鏡卸業「西垣幸男商店」の西垣隆男さん(79)=同市河原町=が自宅の倉庫で、2016年に95歳で他界した父・幸男さんと二人で収集した明治―昭和の眼鏡などを展示している。金張フレームやべっこうを使ったものなど、「眼鏡の歴史」とも言える品々が並ぶ。西垣さんは、「父に花を持たせてやりたかった。(自宅前の)通りのにぎやかしにも一役買えれば」とほほ笑んでいる。

倉庫の整理をした際に出てきたさまざまなデザインの眼鏡やサングラスのほか、ガラスのレンズをカットするために使った「砥石調整器」やレンズのサンプル、各種ネジなどをずらりと展示している。

幸男さんが出張の際に眼鏡を入れたリュックサックや、かぶったハンチング帽など、当時の卸業の一端が垣間見えるほか、西垣さんが大好きな野球グッズの数々も。大ファンの阪神タイガースグッズや、掛布雅之さん、長嶋茂雄さんらのサインボールなどもあり、父と子のさまざまな歴史もうかがえる。

かつて同市二階町にあり、ガラス製品やせんべいを販売していた「一笑堂」に生まれた幸男さん。当時はせんべいを焼いたり、配達したりし、孝行息子として知られたという。激動の時代にあって周囲の支えという〝運〟を味方にガラスや眼鏡の卸業で起業。眼鏡の町として知られる福井県鯖江市のメーカーから商品を仕入れ、各地の小売店に届けてきた。

2代目を継いだ西垣さんも若い頃から父と共に商品が詰まったバッグを手に各地を渡り歩き、四国一円のほか、西は島根、東は愛知と、販路も構築した。自社のオリジナル商品も開発している。

小売店への飛び込み営業も多いが、西垣さんは、「(地元の)篠山鳳鳴高校時代の硬式野球部で培った度胸と健康のおかげでやってこられた」と言い、今も後輩たちに差し入れをするなど、〝恩返し〟を続けている。

息子たちに3代目を継承し、「今も毎月、鯖江に通い、小売店にも出向くけれど、ほとんど運転手さん」とはにかむ西垣さん。「眼鏡というものを通して、本当にいろんなことを学ばせてもらった」と家業に感謝する。

展示には、「改めて眼鏡の良さを知ってもらいたいし、日本にはこんなにも技術力があったことを感じてもらえたらうれしい」と話す。次の目標も決まっている。「父が生まれ育ったのは二階町。自分が元気なうちに、わずかな時間でもいいので、父の眼鏡を二階町で展示してやりたい」と話している。

今も各地を飛び回っているため、倉庫のシャッターを開けて〝店開き〟しているのは不定期。土、日曜は比較的開けているそう。

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