憧れのボートレーサーに 兄2人と「3兄弟」誕生 山下智己さん「どんな人生かわくわく」

2023.11.16
地域注目

ボートレーサーとしてデビューを果たした山下さん=兵庫県尼崎市のボートレース尼崎で

兵庫県丹波篠山市出身の山下智己さん(19)が11月、〝水上の格闘技〟とも言われる競艇の兵庫支部所属の選手としてデビューした。「緊張もするけれど、これからどんな人生になっていくかわくわくもする」と笑う山下さん。兄の大輝さん(27)、拓巳さん(22)も競艇選手で、珍しい「競艇3兄弟」の誕生でもあり、「自分も活躍したいし、愛知の前田さん3兄弟(篤哉さん、滉さん、翔さん)のように、『丹波篠山の山下3兄弟』としてみんなで有名なボートレーサーになりたい」と意気込んでいる。

「最高速度は時速80キロくらいですが、水面が近いので体感は120キロくらい。怖さもあるけれど、とても楽しい」。まだあどけなさを残しつつ、胸に闘志を宿したレーサーがほほ笑む。

同市立西紀小、西紀中出身で、篠山鳳鳴高卒業後、福岡県柳川市にある「ボートレーサー養成所」の試験を受け、2回目の挑戦で合格を果たした。養成所は〝超難関〟として知られ、山下さんの第133期は、全国から1216人が受験し、合格者は52人。倍率23・4倍という狭き門だった。

養成所では操縦や整備の技術、学科など多岐にわたる訓練に臨んだ。朝は6時起床ですぐにベッドを整え、乾布摩擦や体操をこなし、8時から授業開始という厳しい生活を送ったものの、「兄から厳しさを聞いていたのでかなりハードルを高くしていたためか、自分は楽しめた。良い同期にも恵まれた」と振り返る。

競艇好きの両親のもとで育ち、幼稚園時代から競艇場に通っていたものの、「兄たちはよくレースを見ていたけれど、自分は遊具で遊んでいて、『早く帰りたいな』と思っていた」。そんな山下さんがボートレーサーを志したのは兄の存在だ。

2020年に大輝さん、22年に拓巳さんがデビュー。特に大輝さんが語る船上からの景色やスピード感、何よりもレースで火花を散らす姿に「かっこいい」と憧れるようになり、同じ道を歩むことを決めた。

競艇の魅力は、「エンジン音と、(前傾姿勢で立ち上がって旋回する)モンキーターンのかっこよさ。賭け事ではあるけれど、見るだけでも迫力がすごい」と言い、「ごくまれに良いターンが決まったときがとても気持ち良い。同じ選手になったからこそ兄のうまさも実感している。すごいなあって」と語る。

操船も整備も、まだまだこれから。先輩選手や兄からもアドバイスを受けながら腕を磨く。「自分たちは賭けの駒。人から賭けてもらえる人生なんてなかなかないし、賭けてくださった人の思いをしっかりと背負い、一戦一戦、最後まで走りたい」と気合。「近い目標は5年以内にヤングダービーで活躍すること。そして、いつか最上位の『SGレース』の常連に」と高みを目指す。

また、「丹波篠山では競艇に触れることが少ない。自分たちがいることで、少しでも興味を持ってほしいし、ボートレーサーを志す人が出てきてくれたら」と笑顔を浮かべている。

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