オートバイの世界最速記録更新 ライダーの顔持つ映画監督 国際大会出場へ再起

2023.12.04
地域注目

 兵庫県丹波市氷上町成松の映画館「ヱビスシネマ。」の支配人で、映画監督の近兼拓史さん(61)が11月22、23の両日、大潟村ソーラースポーツライン(秋田県)で、全国各地の金属加工企業と共同開発したオートバイ(50cc)の走行テストを行い、平均時速117キロを記録。非公式ながら、自身が持つ世界最速記録を15キロ以上更新した。今夏に不運にも出場がかなわなかったオートバイ国際大会に向け、「もう一度走らせてほしい。一緒に世界一を目指しませんか」と協賛を募っている。

ライダーの顔も持つ近兼さん。2019年、アメリカ・ユタ州の塩湖平原で行われる国際大会「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ」に出場し、6部門で世界最速記録を樹立した。

今年の大会に向け、日本企業の技術力を世界に示そうと、町工場の奮闘ぶりを描いた映画「切り子の詩」でつながった企業約20社とマシンを開発。非力な国産車「スーパーカブ」をベースに全長3メートル、全高70センチほどの、以前の世界記録達成時より15キロほど軽いマシンを完成させた。

スーパーカブをベースに国内約20社で共同開発したマシン(提供)

しかし、開催直前に上陸したハリケーンの影響で大会は中止に。近兼さんを含むスタッフはすでに日本を発っていた。マシンの開発費や運送費、スタッフの渡米費用などを含め、およそ2000万円がかかった。飛行機や宿の手配、スポンサーへの連絡などの作業が山積し、過労で倒れて歯が折れた。

「絶望」という状況だったが、「応援いただいた皆さんに、なんとか走る姿を見せたい」と自らを奮い立たせ、国内での走行を模索。ソーラーカーの日本縦断挑戦時から縁があり、1周約25キロの広大な周回コースがある大潟村ソーラースポーツラインでの走行テストが実現した。

2日間で計7回走行。400メートルで平均時速を測った。コースの幅は7メートル弱と狭く、助走距離はボンネビル大会より600メートル短い1000メートルという悪条件の中で行った。

初走行ながら、「スタートした瞬間『いける』と思った。アクセルの突きで手応えがあった」という言葉通り、初日の3回目で106キロを記録し、前回の世界最速記録を更新。その後も記録を伸ばし、6回目で117キロを計測した。「意地。少しは運が残っていたのかな」と話す。

マシンの実力こそ示したが、来年の大会出場にはまた費用がかさむ。「歴史に残る記録をみんなで達成したい」と呼びかける。

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