中学生の健康の関心明らかに 英語論文が「学会賞」 養護教諭が研究7年「授業に生かす」

2023.12.18
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論文が日本学校保健学会の「学会賞」に選ばれた足立さん。論文のタイトルは、日本語で「中学生の日常生活での保健行動と認識を評価する尺度の開発」=兵庫県丹波市柏原町南多田で

兵庫県丹波市立柏原中学校の養護教諭で、保健学博士の足立節江さん(56)が、中学生の健康と行動、認識などについて研究して英語で執筆した論文が、日本学校保健学会の「学会賞」に選ばれた。中学生の健康に関する興味、関心が、よく眠るため、体型維持のためなど「健康増進」ほか4因子にあることを明らかにし、これら因子を使った授業をすることが、生徒の健康向上につながるとした。足立さんは、「授業で、いきなり『睡眠を取ろう』『朝ごはんを食べよう』と導入するのではなく、生徒の生活習慣など身近なところから質問を投げかけることで、生徒の生活により効果的に落とし込むことにつなげたい」と話している。

足立さんによると、中学生は健康的な行動を身に付ける重要な時期にあるにもかかわらず、保健教育で学んだ健康に関する知識を生活に生かしている生徒は60%ほどという調査結果がある。自身の経験からも中学生が健康につながる行動を実践しないケースが散見されたため、どのような授業をすれば良いか、神戸大学大学院で2015年に研究を開始。7年かかって論文をまとめ、昨年、博士号を取得した。受賞論文は、博士論文の一部。

まず、中学生にインタビューし、健康への認識を調査。地域や経済状況などに偏りが出ないよう、計600人以上にアンケートを配布するなど、調査を重ねた。

その結果、中学生の健康に関する興味、関心は▽健康増進のために運動する(よく眠るため、体型を維持するため、など)▽快適にいたいから適切な行動をする(家族で食事をする、食事のマナーを守る、など)▽次の日にしんどくならないように自分で時間を決めて生活する(夜更かしをしない、など)▽健康と約束を守るために時間を決めてスマホを使う―の4因子にあることが分かった。

さらに、これらが生徒の生活習慣や、身体・精神的な健康度のほか、自尊感情などに影響を及ぼしていることを、別の分析によって明らかにした。

中学生が日頃行っている行動が健康増進につながっていることを、授業で意識させることが大事と考えた。例えば「運動についてどんなことを思うか」「毎日、元気で快適に生活するためにどんなことをしているか」「次の日にしんどくならないように、どんな工夫をしているか」などと問いかけ、生徒の返答を承認することで、自分の生活と健康が結びついていると考えられるようになるという。

論文は英語での提出が条件で、英語論文の参考文献を集めるなど苦労した。オリジナルの研究により見解を示す原著論文で、査読も英語でやり取りした。

足立さんは「壮大な研究になったが、多くの協力があってできたこと。住まいや年齢などにとらわれず、挑戦する大切さを学んだ」と語った。

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