沢床に無数のはんこ 白く縁取られた丸模様 正体は噴気孔跡【シリーズ・丹波ムー】

2024.01.24
地域注目自然

金屋川源流部の沢床に見られる噴気孔跡=兵庫県丹波市山南町金屋で

兵庫県丹波市山南町金屋の金屋川源流部の沢床に、世にも奇妙な模様をした岩塊が見られる。約3×20メートルの範囲に、リング状の白いはんこを無数に押したような光景が広がる。傾斜のあるコンクリート道路に滑り止めとして施される「O(オー)リング模様」にも似ているが、沢床は非常に滑りやすいのでご注意を。

山南町中央公民館発行の「さんなんの自然~地形・地質~」によると、リング状の模様の正体は、大規模な火砕流が浅い水域に流れ込み、水蒸気が上方に抜けてできた噴気孔の跡(噴き抜けパイプ様構造)という。直径は10―15センチほどで、150個ほどが確認できているそう。

中生代白亜紀(1億3600万―6500万年前)の頃、ここら一帯は、阿蘇に匹敵する巨大なカルデラだった時期があり、また湖のような水域であったと推定されている。

コンクリート道路の傾斜地に施された「Oリング模様」。噴気孔跡みたい?

この水域に火山噴火による火山灰や火砕流が降り積もって水を覆ったとき、高温のため、水が気化して水蒸気爆発を起こし、噴気孔が形成されたという。

神戸大学教育学部地学教室の研究報告によると、岩の表面に現れたリング状の模様は、岩塊内部にも続く円筒状で、内部を凝灰岩が満たし、その外縁部に見られる幅2―3センチの白っぽいリングは急冷相と解説している。

このような噴気孔跡は、全国的にも大変珍しいという。

噴気孔跡のそばには不動明王像が祭られているが、地域の古老によると、以前は、これより上流へ500メートルほど詰めた所に安置されていた。しかし、その当時、その付近で盛んだった「ろう石」採掘により、発破石が飛散して石像が埋没する恐れがあったため、1972年10月、現在の場所に移転させた。その計画のための周辺調査をしていた際に噴気孔跡を見つけたのだという。

噴気孔跡そばに祭られている不動明王像

郷土の歴史に関心を寄せている竹内安紀さん(75)は、「子どもの頃、兄らと一緒にこの周辺で魚を捕ったりしてよく遊んだが、噴気孔跡にはまったく気づかなかった」と振り返り、「実は数あるリング状の噴気孔跡の中にハート形がある。見つけられたら何か良いことが起こるかも」と笑った。

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