ミニ石舞台 盛り土失われた古墳 残る謎の「火雨」伝説【シリーズ・丹波ムー】

2024.02.11
地域歴史注目

巨石が積み上げられた石舞台古墳のミニチュア版のよう。「火雨」伝説がある=兵庫県丹波篠山市熊谷で

「石舞台古墳」といえば、奈良県明日香村にあり、封土(盛り土)が失われたため、石室の天井石などがむき出しになっていることで有名だ。そのミニチュア版ともいえる古墳が、兵庫県丹波篠山市熊谷地区にある。

石舞台古墳と同じく封土がなくなって石室の巨石が露出しており、その様子が「石のくど(かまど)」に見えることから、「石くど」と呼ばれている。

石室の長さは約4メートルで、高さは3メートル。6世紀後半と考えられており、地域の有力者の墓と考えられるものの、遺物が見つかっていないことから、詳細は不明という。

「丹波篠山五十三次ガイド」には、「この付近では、火雨が降ったときの隠れ場だという言い伝えがある」とある。「火雨」が気になって調べてみると、山梨県韮崎市に「火雨塚(ひのあめづか)古墳」にたどり着いた。そこにはこんな伝説が残っている。

ある家に旅の僧が1泊し、僧はお礼として、「1年のうちに火の雨が降る。避難のために石室をつくるように」と言い残して去る。数カ月後、富士山が突然噴火し、甲斐国内は甚大な被害となったが、村の人々は石室のおかげで難を逃れることができた。その時の石室の一つがこの「火雨塚」である―。

長野県佐久市にも「火の雨塚古墳」があり、こちらは浅間山の噴火に由来する。。

むき出しの石室が古代の人々の墓の一部と分からなかったことが理由か、丹波篠山市教育委員会文化財課は、「昔の人々が石くどの意味を想像する中で生まれた伝説ではないか」と推測する。

ただ火山が近いため、噴火の記憶が色濃く残り、石室を見て火雨にたどり着くのも分かる。しかし、丹波篠山には、温泉はあれど火山はない。

旅人から噴火を伝え聞いて生まれた伝説か、はたまた隕石? 火山があった太古の記憶?宇宙人の襲来? 想像力が暴走し始めた。

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