”声のボランティア”一筋 視覚障がい者に情報届けて29年 89歳に大臣表彰

2024.02.06
地域注目

丹波市の広報紙を手に、マイクに向かう日原さん=兵庫県丹波市山南町野坂で

29年間にわたり、兵庫県丹波市の広報紙や丹波新聞などを朗読してCDに録音し、同市山南地域の視覚障がい者に情報を届けているとして、山南町の日原恒子さん(89)に厚生労働大臣表彰が贈られた。教職を退職後に始め、張りのある声ではきはきと朗読する“声のボランティア”。1度も活動を休むことなく、行政や地域の情報を必要としている人に届けている。日原さんは「身に余る光栄で、夢にも思っていなかった。先輩の指導、仲間の支えがあって続けられたことで、感謝しかない」と話している。

1994年から朗読ボランティアグループ「かけはし」(13人)のメンバーとなり、過去には代表を務めた。現在は月1回ほどのペースで、市社会福祉協議会山南支所の相談室でマイクに向かい、CDにダビング。これを4人の視覚障がい者に郵送している。

和歌山県出身。戦災で自宅が焼け、親類を頼って旧氷上郡に移住した。教職の道を歩み、小学校に3年間勤めた後、中学校で英語を教えた。

58歳で退職後、知人に誘われ、同グループで朗読ボランティアを始めた。「社会の役に立ちたい」との思いからだったが、それが生きがいになった。伝わりやすさを身に付けようと、標準語のアクセント辞典を見ながら実践したり、各地の講習に出かけたりした。教員時代に培った大きな声で話すことも生きたという。

文章を単に読むのではなく、別の言葉に言い換えたり、簡単な解説を付けて分かりやすく伝えたりと、工夫を心がけている。情報を届けた視覚障がい者との交流会で感謝を伝えられたり、手紙をもらったりしたことが、活動の励みになっているという。

年齢を理由に何度もやめようと思ったが、「仲間に『いてもらわないと困る』と言われ、続けている。命ある限り、続けたい」と話している。

関連記事