兵庫県篠山市大熊にある小さなお堂「瑠璃寺・薬師堂」で、子授け法要が営まれた。古くは村人や出身者のみでこぢんまりと行っていたが、近年、口コミや交流サイト(SNS)で「御利益あり」と広がり、今年も県内外から多くの人が参拝。境内の薬師堂に祭られた本尊、薬師如来と向き合い、強い願いを胸に静かに手を合わせていた。
地元の丹波地域をはじめ、近隣の同県三田市や西脇市のほか、京阪神、遠くは福岡、長野、静岡、神奈川、千葉などから61組が参詣。懐妊や安産を祈願したほか、願いがかなった夫婦や家族15組が、1歳にも満たない乳児を抱えて「願済」の報告に訪れていた。
法要では、少林寺の飯田天祥住職が般若心経や薬師如来勤行次第などを読経。参詣者も一緒に薬師如来の真言「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」を複数回唱えた。
いとおしそうにわが子を抱いて参拝していた市内の40歳代女性は、「5、6年、不妊治療を続けていたが、参拝後、ほどなくして妊娠した。病院を替えたタイミングと参拝が重なったといえばそうだけれども、すごく不思議。きょうはその感謝と、『どうか2人目も』と願い、やって来ました」とほほ笑んだ。
一昨年、大阪から移住してきたという市内の30歳代の夫婦は、「すごくパワーをもらえたような気がして、赤ちゃんを授かれるような気持ちになっている。来年、良い報告を持ってここに来られたら」と話していた。
自治会長の男性(67)は、「わが村も小学生以下はわずかに2人となってしまったので、子どもの誕生を願う気持ちはよく分かる。参詣者のお役に立ちたいと、毎年、村総出で準備をし、この日を迎える。そのことが村人同士の交流、一体感を育むことにもつながっている。来年も少しでも多くの願済報告を待ちたい」と話している。