崇廣館の歴史を本に 「先人の足跡知って」 再建する会

2024.02.09
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崇廣館の歴史をまとめた本

兵庫県丹波市にあった柏原藩の藩校「崇廣館」の復元を目指している住民有志の団体「崇廣館を再建する会」(西垣伸彌会長)が、崇廣館の歴史などをまとめた本「崇廣館と志士たち―崇廣館をめぐる人物群像」を発行した。江戸時代末期に崇廣館が誕生した経緯や教育内容をはじめ、藩校としての役目を終えたのち、氷上郡役所、キリスト教会として建物が活用された歴史を縦軸に、崇廣館の開校を藩主に進言した儒学者の小島省斎、氷上郡役所で郡長として執務した田艇吉、アメリカ人の宣教師、ソーントンなどの人物を横軸に書いている。本の発行の一方、10日午後2時半から柏原自治会館(同市柏原町柏原)で、丹波市出身の岩槻邦男・東京大学名誉教授による講演会を行う。

同会は昨年10月に設立した。同会の依頼を受け、荻野祐一丹波新聞社会長が執筆した。

崇廣館は安政5年(1858)、今の県柏原総合庁舎テニスコートの辺りに建てられた。四書五経の素読を中心に藩士の子弟らを教育した。崇廣館の開校により教育を重んじる風土が築かれ、明治時代になって高等小学校や、のちに今の柏原高校となった柏原中学校や柏原高等女学校が住民や先覚者の力で生まれた。

同書では、教育の歴史のほかに、明治以降の崇廣館の建物の活用にも触れている。氷上郡役所時代には、省斎の門下生である艇吉が明治の鐘ヶ坂トンネル開通に向けて尽力したこと、大正時代には、キリスト教思想家の内村鑑三が称賛した宣教師のソーントンがキリスト教を伝道する聖書塾を開き、全国各地から塾生が集まったことなどを書いている。

一方で、崇廣館を巡る人物にもスポットに当てた。崇廣館の開校より前に藩校の「又新館」をつくった柏原藩主の織田信敬や、信敬が崇敬し藩政に登用した省斎の人徳や功績、省斎の門人で藩政に敏腕をふるった津田要や田辺輝実、田村看山、省斎と親交のあった儒学者の池田草庵、高等女学校を開校した教育者の近藤九市郎などを取り上げている。

崇廣館は2007年に解体され、青垣リサイクルセンターに部材が保管されている。

岩槻さんの講演会のテーマは「崇廣館に学ぶ―教えるから学ぶへの転換」。参加無料。

岩槻さんは日本植物学会会長などを務めた植物学者だが、著書に「近世日本の教育遺産群を世界遺産に」(共著)がある。講演では江戸時代までの藩学と寺子屋などの教育制度について話す。「崇廣館と志士たち」に序文を寄せている。

西垣会長は「明日の地域を築くため、教育に力を入れた先人たちの足跡を知ってほしい」と話している。講演会でも同書を販売する。1部1000円。

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