国内最大の「アベマキ」倒れる 3連休避け「人も民家も傷つけず」 丹波焼の里のシンボル

2023.09.21
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倒れた今田町上立杭のアベマキの巨木=2023年9月19日午前7時12分、兵庫県丹波篠山市今田町上立杭で 日本六古窯の一つ、丹波焼の里として知られる兵庫県丹波篠山市今田町上立杭にあり、「おみの木」の愛称で親しまれた「アベマキ」(ブナ科)の巨木が19日午前3時ごろ、根元から折れて倒れた。住民によると、以前から木が弱っており、樹木医の治療により、木の傾きが進行しないようワイヤーで引っ張ったり、太い枝を金属の支柱で支えたりしていた。推定樹齢500年以上で、丹波焼の歴史とともにあり続けたシンボル。大勢の住民が集まり、「ショックやわ」とため息をつき、「特に強い風が吹いていたというわけでもなく、もうぎりぎりの状態で立っていたのだろう」と落胆の表情を見せていた。

胸高幹周り5・4メートル、樹高28メートルで、アベマキとしては国内最大。県の郷土記念物、天然記念物に指定されている。

倒木の原因について樹木医の小山雅充さん(同市東岡屋)は、「20年前にはすでに根元に大きな空洞ができていて、徐々に傾いていた。内部の腐りが進行し、耐えきれなくなって倒れてしまったのでは」と推測する。

おみの木の南北と西側は、窯元や民家が建ち並ぶ風情ある古い町並みを残した場所で、すぐ南側には、県の有形民俗文化財に指定されている丹波焼最古の登り窯(1895年築窯)が見られるなど、人気の観光エリア。木の根元には、稲荷神社と不動明王を祭っており、それらの御神木としてあがめられ、住民の信仰の対象にもなっていた。

倒木の下敷きとなり大破した稲荷神社

倒木により、稲荷の社と鳥居が大破し、石垣の一部が壊れた。倒木の重みと衝撃で、道路も浅く陥没している。また、枝が電線と接触したため、周囲の3軒で停電があったという。

現場近くに住む市野保さん(79)によると、「『ドン、ドーン』とものすごい音がし、停電した。懐中電灯を手に外の様子を見に行くと、道路上に枝葉を茂らせた巨木が横たわる光景が広がっていてびっくりした。毎日、お稲荷さんとお不動さんにお参りをしていたが、見慣れた日常の景色がすっかり変わってしまい寂しい」と話す。

3連休明けの出来事。住民によると、連休中は観光客の往来が激しく、おみの木の下に設けられた駐車場も常時、車がとまっていた状況だった。「もし、連休中の日中に倒れていたら、と想像するだけでぞっとする」と肩をすくめ、「おみの木の東側だけが唯一、建物のない開けた空間。そちらの方に傾いていたとはいえ、人も民家も傷つけず倒れた。神木だけに神様の力が働いたのでは」と神妙な面持ちで語った。

樹勢が旺盛だった頃の今田町上立杭のアベマキ(樋口清一さん提供)

樹木医は過去に最も効果的な治療方法として、傾いている東側からつっかい棒で支えることを提案したが、そうすることで生活道路が不通となってしまうため、実現しなかった。

同集落の自治会長、市野力さん(64)は、「以前から樹勢が弱っていたので心配はしていた。この地域で一番古くて大きい木がなくなってしまい残念。ただ、人や建物に被害はなく、不幸中の幸いだった」と語った。

市教育委員会文化財課は、現状復帰に注力すべく、県や自治会と協議を行い、関連予算や撤去時期などについて検討している。

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